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  • 2025年10月29日
  • セミナーレポート

「野球場」から「まち」へ、ブランドの概念を拡張するPR戦略 ~エスコンフィールドが描く、北海道を代表する観光地への道~

2025年10月2日、当社が主催するPRカンファレンス「BILCOM DAY 2025 - PRで創るブランドの第一想起」を開催しました。今回は、BILCOM DAY 2025内で行ったトークセッション「野球場」から「まち」へ、ブランドの概念を拡張するPR戦略 ~エスコンフィールドが描く、北海道を代表する観光地への道~のセミナーレポートをお届けします。

 

■ゲスト
株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 事業本部 コンシューマー統括部 マーケティング部長 
田邊 朋哉 氏

大学卒業後、新卒で北海道電力に入社。2006年に株式会社アイレップに中途として入社。インターネット広告ビジネスの魅力に惹かれ、約7年間アイレップで営業経験を積む。2013年Googleへ入社。旅行業界チーム、不動産業界チームの広告営業として11年間従事。現在は地元北海道に戻り、ファイターズ事業のマーケティング全体を担う責任者として主にCRM領域、アプリ領域、広告領域、自社WEBサイト/SNS領域を担当している。

 

■モデレーター
ビルコム株式会社 取締役
早川 くらら

2005年、ビルコム株式会社に入社。クライアントのコミュニケーションプランニングや新規事業の立ち上げ、コンサルタント、人事、営業、など幅広い業務を経験。2015年から同社取締役に就任し、経営に携わっている。

 

早川:ここからは株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 事業本部の田邊様をお迎えし、ブランドの概念を拡張するPR戦略についてエスコンフィールドの事例をお話いただきます。田邊様よろしくお願いいたします。

田邊:皆さんこんにちは、ファイターズの田邊です。生まれも育ちも北海道ですが、20年近く東京でデジタルマーケティングの仕事をしています。コロナ禍の際、「北海道にボールパークを作る」というニュースを見て、これは面白そうだと思っていました。ご縁があって昨年から参画し、20年以上ぶりに北海道に戻りました。

早川:ありがとうございます。早速ですが、エスコンフィールドの概要を教えてください。

田邊:我々はエスコンフィールドへの移転を機に分社化しました。選手の育成・管理を担う球団(北海道日本ハムファイターズ)と、私が所属する事業運営会社(ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)です。これは、単に野球好きのファンを増やすだけでなく、野球に興味がない人にでも来てほしいという強い想いからです。「エンタメ施設」としての事業運営をミッションとしています。

 

早川:エスコンフィールドのオープン時は報道量も非常に多く、大きな注目を集めました。なぜ野球場ではなく、「街」という壮大なコンセプトを目指す必要があったのでしょうか?

田邊:一番の根底にあるのは、野球人口が年間2〜3万人も減少しているという強い危機感です。昭和の時代のように、待っているだけでファンが増える時代は終わりました。そこで我々が目指したのは、野球を核としながらも、誰もが楽しめるボールパークや街そのものを作ることでした。日本市場だけでなく、グローバルにも通用する場所になる、という高い目標を掲げました。

早川:新球場を作る際、こだわって作られたポイントがあるんですよね?

田邊:一番こだわったのは開閉式の屋根です。前の本拠地だった札幌ドーム時代には、大きな課題を抱えていました。ドームのグラウンドは人工芝で、しかもコンクリートの上に薄い巻き取り式の芝を敷いたものだったため、選手がプレーするには非常に固く、怪我のリスクが高かったのです。選手からは「ダイビングキャッチも躊躇してしまう」という声が上がるほどでした。そのため、新球場では、絶対に天然芝にするということが最大のこだわりでした。しかし、北海道の気候、特に冬は雪で覆われるため、屋根は必須です。そこで、天然芝に不可欠な日光を十分に取り入れるために、開閉式の屋根が必要だったのです。しかも、ただ開くだけでなく、様々な天候に素早く対応できるよう、25分というスピードで開閉できることにもこだわりました。これは、選手の最高のパフォーマンスを引き出すための、我々の譲れない想いの表れです。

早川:選手ファーストを徹底されているわけですね。こうしたハード面のこだわりだけでなく、ボールパークや街づくりといったソフト面のコンセプトを実現する上で、ベンチマークとされた場所はありますか?

田邊:意外だと思われるかもしれませんが、東京ディズニーランドです。我々は野球屋さんではなく、エンタメ屋さんにならなければいけない。そう考えた時、最高の体験価値を提供しているのはどこか。東京ディズニーランドの魅力は、アトラクションだけでなく、トイレの数や待ち時間といったストレスを徹底的に排除するオペレーションにあると分析しました。

今でも役員自らが毎日球場内を歩き回り、改善点を探しています。SNSで「ディズニーランドみたい」というコメントを見かけると、我々の想いが伝わっていると感じて嬉しくなりますね。

早川:先ほど、野球ファン以外の方にも来てほしいといったお話がありましたが、具体的にその層を振り向かせるために、特に効果的だった施策について詳しくお聞かせいただけますか?

田邊:効果を感じたのは「誘い誘われ施策」です。これは、熱心な野球ファンの方に、まだエスコンフィールドに来たことがないご友人やご家族を誘っていただくきっかけを作るキャンペーンで、LINEやSNSを通じて展開しました。野球に興味がない方でも、一度この場所の楽しさを体験してもらえれば、きっと好きになってもらえるという自信があったからです。誰か一人野球好きな方がハブになってくれることで、その周りの方々にも魅力が伝わっていく。その連鎖を狙いました。

他に、今年大きな手応えを感じたのが人気YouTuberの野球大会です。東海オンエアさんなど、特に若い世代に絶大な人気を誇る野球好きのYouTuberの方々をお招きし、ファイターズOB選手と真剣勝負をしてもらうというイベントを開催しました。

当日は約15,000名もの方にご来場いただいたのですが、驚いたのはその客層です。これまで我々がリーチできていなかった、全く新しいファン層であるYouTuberのファンの方々が大勢来てくださったんです。「東海オンエアが北海道に来るの?」「野球も観れるんだ」といった形で、普段野球を見ない方々がエスコンフィールドに足を運ぶ大きなきっかけになりました。

早川:YouTuberという新しいメディアをハブにすることで、野球の枠を超えた集客に成功されたわけですね。まさにエンタメ施設ならではの展開です。

田邊:我々のアプリもお客様との重要な接点です。球場に来て「チェックインチャレンジ」をするとユニフォームが当たるなどの企画はもちろんですが、球場に来られないファンのために、北海道内に1000店舗以上あるセイコーマートさんでもチェックインできるようにしました。札幌市外にお住まいの方ですと、頻繁に球場に来るのは難しい。でも、地元のセイコーマートでチェックインできれば、日常の中でファイターズとの繋がりを感じてもらえます。実際にこの施策でアプリのダウンロード数が一気に伸びました。このように、野球だけでなく、多様なデジタル接点を通じてブランドに触れてもらう機会を戦略的に作っていくことが、ファン層の拡大に不可欠だと考えています。

また、「聞いてよFビレッジおじさん」という目安箱をSNS上に設けています。特徴的なのは、単なる窓口ではなく、役員自らがすべての意見に目を通して直接返信している点です。施設運営に関しては我々もまだ素人。だからこそ、お客様の声こそが最も重要な指針になります。この双方向のコミュニケーション自体が話題となり、ファンとの「共同創造」を象徴する取り組みになっています。

早川:ありがとうございます。体験価値を次に繋げることや継続的なファンとの接点作りは大変学びになりました。最後に、今後の展望をお聞かせください。

田邊:当社の役員からよく言われるのが「三つ子の魂百まで」という言葉です。開業3年目となる今年が、エスコンフィールドの未来を決定づける最も重要な年です。この1年でブランドの基礎を固め、次の10年、20年につなげていきたいと考えています。

大きなマイルストーンとしては、2028年の新駅開業があります。これにより、球場へのアクセスが向上し、年間来場者数700万人という目標が見えてきます。我々は、北広島市やパートナー企業と共に、この場所を「共同創造空間」として発展させていきたい。野球という枠を超え、世界中の人々が集い、楽しめる場所として定着させていきたいですね。

早川:変化の時代を生き抜くためのヒントは、顧客や社会と真摯に向き合うことから生まれるのかもしれません。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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