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- 2025年06月26日
- セミナーレポート
なぜ、あのブランドはCMを減らしても強いのか?~行動変容につながるマーケ予算の最適解~
若年層のテレビ離れや情報チャネルの多様化によってTVCM効果の低下が進み、ブランドのマーケティングは転換期を迎えています。膨大な広告が溢れ、生活者にスルーされがちな現状で、「どのような施策に予算を投じれば良いのか?」と悩むブランドのご担当者様も多いのではないでしょうか。
本セミナーはそのメカニズムを解き明かし、効果的なマーケティング予算の最適解について深掘りしていきます。
登壇者:ストラテジックプランニング局 局長 長沢美香
旭化成ホームプロダクツ、マツキヨココカラ&カンパニー等、toC系企業を中心に統合型のPR戦略を策定。「ゆとりうむプロジェクト」や「HER-SELF女性の健康プロジェクト」など、複数企業が協働するプロジェクトも立ち上げ、責任者として推進。
現代の情報環境と脳の構造
現代社会は情報過多の時代です。私たちは1日で平安時代の一生分の情報に触れているとも言われています。これほど大量の情報が押し寄せる中で、人々は自分に関係のない情報を自然とスルーするようになっています。ここで注目したいのが、人間の脳の情報処理の仕組みです。脳は、主に「視覚情報」と「意味的情報」の2種類の情報を処理します。
視覚情報は目に飛び込んでくる直接的な情報で、認知に直接影響します。ブランドの親近感や好感度を高める効果がありますが、持続しにくいという特徴があります。
意味的情報は商品の特徴、ベネフィット、社会的価値など、より深い情報を指します。これらは脳の異なる領域で処理され、理解や納得につながり、持続的な記憶として残りやすく、行動変容を促しやすいと言われています。
つまり、CMのような短い広告枠は視覚情報が中心となり、主に「認知」を促します。一方、テレビの特集記事やウェブの記事、SNSでの話題など、より詳細な情報を伝えることができるメディアは「意味的情報」を伝え、理解や納得を通じて行動変容につながる可能性が高いのです。CMを減らしても売上が落ちないブランドは、この「意味的情報」を効果的に伝えていると言えるでしょう。
例えば、ネスレの「キットカット」では『受験生応援キャンペーン』を行いました。キットカットの発音が九州の方言「きっと勝つとぉ!(きっと勝つよ!)」に似ていることから、センター試験の受験会場で、受験生にキットカットを食べてもらうという施策を行いました。試験後、キャンパス内にあるごみ箱にキットカットの空箱がいっぱいあるのを見た受験生が、「何でこんなにキットカットがあるんだろう?」という疑問をSNSで発信。すると、「それは九州の方言で…」と教えてくれた人がいたことから、口コミであっという間に広がりました。これがSNSで話題化し、ニュースでも取り上げられたことで、受験生のお守りとして定着し、売上アップにつながりました。このキャンペーンではTVCMを行っていませんが、売上が5倍、利益は10倍になったそうです。
マーケティングを取り巻く課題と「選ばれるブランド」の条件
多くの企業から寄せられるマーケティングに関するご相談は、以下の3つに集約されます。
①低価格品の台頭:物価高の中で生活者の生活防衛意識が高まり、低価格帯のプライベートブランド(PB)などに流れてしまった顧客が戻ってこないという課題。
②CM効果の低下:CMを投入しても生活者の行動に直結せず、売上につながらない。流通を動かすための施策(リベートなど)が必須になっている現状。
③指名買いされない:短期的な売上施策に予算が偏り、中長期的なブランディングができていないため、価格を下げないと指名買いされない状況。
これらは、消費者が「価格重視」になり、「CMだけでは動かない」、そして「ブランド価値が十分に伝わっていない」という状況を示唆しています。
行動変容につながるPRコミュニケーション設計
私たちは生活者の行動変容を促すために、以下の3つのフェーズに合わせたPRコミュニケーション設計を提唱しています。
世の中ごと化PR
社会課題やトレンドと紐付け、マスメディアの編集枠などを活用して、広く社会に「今の常識」として情報を伝えます。説明コストが高い分、詳細な情報を伝えることで、情報の信頼性を高めます。
仲間ごと化PR
SNSなどを活用し、インフルエンサーや一般のユーザーを通じて、仲間内での共感や口コミを広げます。「みんながやっている」という認識を醸成し、行動への後押しをします。
自分ごと化PR
体験や疑似体験の機会を提供し、情報の腹落ちを促します。これにより、態度変容から具体的な行動へとつながります。
これら3つのPRを連携させることで、ブランドが持つ「意味的情報」を効果的に発信し、生活者の行動変容を促すことが可能になります。
情報過多でCMの効果が低下している現代において、生活者の行動を変容させるためには、PR的なコミュニケーションが不可欠です。
・人間の脳の構造からコミュニケーションを設計する
視覚情報だけでなく、意味的情報を効果的に伝えることで、行動変容を促します。
・意味的情報を編集枠で届ける
マスメディアの編集枠やウェブ記事、SNSなどを活用し、ブランドが持つ特徴、利点、価値を深く伝えます。
・「世の中ごと化」「仲間ごと化」「自分ごと化」の仕掛けを連携させる
それぞれのフェーズで効果的なPR活動を展開し、これらを連動させることで、情報が多角的に広がり、行動変容へとつながる流れを構築します。
これらの取り組みを通じて、「選ばれるブランド」を築き、持続的な成長を実現できると考えています。
ビルコムは、単なる情報発信に留まらず、データに基づいた戦略的なPR活動を通じて、企業の市場創造を支援しています。 その強みは、独自の診断技術と伝達技術にあります。
診断技術:これまで曖昧になりがちだったブランド力をデータによって可視化します。独自の指標である「PRパワー」の考え方に基づき、当社で開発・提供している広報効果測定ツール「PR Analyzer」の報道データを用いて測定。必要なPR戦略や現在の課題をデータで客観的に確認できます。感覚的だったブランドの概念を明確なデータで捉え、効果的な戦略立案に繋げています。
伝達技術:PRパワーの測定を通じて課題を明確にすることで、次に打つべき効果的なPR戦略のパターンを見出すことができます。ビルコムには20年以上蓄積されたPR戦略の豊富なノウハウがあります。広報業務に関わるデータ分析やメディア露出状況から企業のブランド課題を可視化し、数多くの成功事例に基づいた打ち手のパターンを蓄積しています。
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書き手:コーポレートブランディング局 川島弓奈