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- 2025年11月28日
- PRノウハウ
周年PRを「お祭り」で終わらせない。歴史を武器に未来の顧客をつかむ、アニバーサリーPR
企業にとって「周年」は、これまでの歩みを祝う大切な節目であると同時に、次のステージへと進化するための機会でもあります。過去への感謝を伝えることはもちろんですが、未来の顧客や社会に対し、自社の存在意義(パーパス)や新たな価値を戦略的に発信できるタイミングは、そう多くはありません。
記念商品を発売したり、歴史を振り返ったりするだけのイベントで終わらせてしまうのではなく、周年を「自社の未来のステークホルダーと繋がるための機会」と捉え、PRの力で社会的なムーブメントに昇華させることが重要です。
本記事では、周年事業をお祭りで終わらせず、既存顧客との関係強化や、新たな顧客層の獲得、ブランドイメージの刷新に成功した近年の企業事例をピックアップし、その施策と狙いをPR視点で分析します。
事例1:ほっかほっか亭(50周年)「元祖」の再定義とZ世代への戦略的アプローチ
戦略的な周年PRを展開しているのが、2026年に50周年を迎えるほっかほっか亭です。2024年頃から周年事業としての活動を開始しています。
課題:ロングセラーブランドの宿命ともいえる顧客層の高齢化。50年の歴史が「安心感」である一方、「古さ」と受け取られるリスクも抱えていました。
ほっかほっか亭は50周年を機に、顧客層の拡大へと乗り出しました。その施策は多角的です。
1. 独自価値の深掘り:「実は、のり弁の元祖」
周年の核となるファクトとして、「ほっかほっか亭が、のり弁の元祖である」という独自価値にフォーカスしました。単なる歴史の長さ(50年)ではなく、のり弁という「文化を創った」というブランドの「格」を再定義し、既存顧客のロイヤリティ向上と新規顧客への優位性アピールにつなげました。
2. 話題化の仕掛け①:大阪・関西万博との連携
大阪・関西万博と連携し、新しいのり弁を開発するプロジェクトを行いました。企業単独の周年事業を、社会的なビッグイベント(万博)と連動させることで、PRの社会性を確保。メディア露出のフックを強くし、特にZ世代を含む若年層の関心を喚起しました。
3. 話題化の仕掛け②:「ロゴのデザイナーを探しています」企画
創業当時のロゴをデザインした人を探すという、ユーザー参加型の探索企画を実施しました。「人探し」というストーリー性は、SNSユーザーの共感と「応援したい」という心理を刺激し、バズを生み出しました。
このSNSでの盛り上がりをフックに、テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」では、ロゴのデザイナーを探す企画が採用。番組を通して、一号店のロゴをデザインした方が見つかりました。その他地上波番組での放映にも成功。SNS起点でマスメディアを巻き込むクロスメディア展開を実現しています。
ほっかほっか亭の事例は、50年の歴史を「強み(元祖)」として研ぎ澄ましつつ、既存顧客(高齢層)への感謝と、未来の顧客への新しいアプローチを両立させています。特にロゴデザイナー探しは、周年という過去の資産を、現代のSNSコミュニケーションで未来のファン獲得につなげた、PR戦略の好例と言えます。
東洋経済オンライン2025年11月8日 「実はのり弁の元祖」「"ほか弁"は店名の略称」なのに…。《若者に認知が薄い》老舗「ほっかほっか亭」が本気で挑むZ世代獲得4つの戦略
事例2:伊藤園「お~いお茶」(35周年)国内ブランドから「グローバルブランド」への飛躍
2024年に35周年を迎えた伊藤園「お~いお茶」も、周年を「次なるステージ」への飛躍点としています。
課題:国内市場での圧倒的な地位を確立する一方、ブランドイメージはある程度成熟していました。次なる成長軸として「海外展開の加速」が求められていました。
「お~いお茶」は、グローバルアンバサダーに、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手を起用。周年を「国内での35年」ではなく、「世界への挑戦の節目」と位置付けました。「日本を代表する飲料」と「日本を代表するアスリート」を重ね合わせることで、世界市場に向けた「お~いお茶」のブランドイメージを発信。従来の「お茶=落ち着いたもの」というイメージに加え、大谷選手が持つ健康的、活動的、世界的といった新たな文脈を付与し、既存イメージを刷新しました。
35周年という節目に、タイムリーかつ世界的な影響力を持つアイコンを起用することで、周年メッセージを最大効率で伝達しました。これは、周年のタイミングを逃さず、企業が次に向かいたい方向性を、社会が注目する人物を通じて発表したPR戦略だと考えられます。
事例3:キユーピー「キユーピー マヨネーズ」(100周年)「未来の顧客」と共創するサステナビリティ
2025年に発売100周年を迎えるキユーピーは、ロングセラーブランドとしての歴史を、未来へとつなぐ戦略を展開しています。
課題:マヨネーズ市場での圧倒的シェアを確立している一方で、ブランドの「次なる100年」を見据えたとき、未来の主役であるZ世代との関係構築や、現代社会の要請であるサステナビリティへのコミットメントをいかにブランドに組み込むかが課題でした。
そこで、キユーピーはZ世代の学生(青山学院大学)と「サステナブルな食の未来」を共創する産学連携プロジェクトを実施。プラントベースフード(植物由来の食品)を使ったメニュー開発などを行いました。
「産学連携」という形でZ世代をパートナーとして巻き込むことで、Z世代の価値観(社会課題への関心、サステナビリティ)を尊重する姿勢が見られます。100周年を過去の感謝だけでなく、未来への約束の機会と設定。マヨネーズという既存の枠を超え、食の未来や環境配慮に取り組む企業である、というブランドイメージの現代的なアップデートを図りました。
ほっかほっか亭が「万博」という社会イベントと連動したのに対し、キユーピーは「サステナビリティ」「Z世代との共創」という、現代の社会的文脈と周年を連動させました。これにより、100年という歴史の重みを古さではなく未来への責任感へと転換し、次世代の顧客に対しても開かれたブランドであることを示すことに成功しています。
まとめ:周年PRを成功に導く3つの視点
成功した周年PRには、共通する3つの視点があります。
①「誰」に「何」を伝えるかを明確にする
ほっかほっか亭(Z世代)、伊藤園(グローバル)、キユーピー(Z世代・未来社会)のように、周年を機にアプローチしたい「未来のターゲット」を明確に定めることが全ての起点となります。
②過去と未来をつなぐストーリーを作る
単なる歴史の振り返りではなく、ほっかほっか亭の「元祖」のように、過去の資産(ファクト)を「未来の価値」として再定義し、共感を生むストーリーに落とし込むことが重要です。
③社会・時代との「接点」を作る
周年を内輪だけのお祝いで終わらせず、万博やグローバルな活躍、サステナビリティなど、社会的な関心事や時流と連動させることで、PR効果は最大化します。
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書き手:コーポレート戦略局 川島弓奈



