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  • 2024年11月21日
  • PRトレンド 、セミナーレポート

丸亀うどーなつ&地味調味料、話題を生むためのPR戦略に迫る! BILCOM DAY 2024 レポート(前編)

2024年10月11日、当社が主催するPRカンファレンス「BILCOM DAY 2024」を開催しました。今回は、BILCOM DAY 2024内で行ったトークセッション「丸亀製麺×味の素社が語る、話題を生むPR戦略の作り方」のレポート(前編)をお届けします。

 

■ゲスト
株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長
株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長 南雲 克明 氏

コナミスポーツ、サザビーリーグ(東京・渋谷)などの事業会社で 様々なブランドのマーケティング責任者を歴任。2018年にトリドー ルHD入社。22年より現職。“感動(KANDO)”を起点に、感性とデータサイエンス両側面から持続的に選ばれる確率を高める 「感動ドリブンマーケティング」を推進。ビジネスと企業価値をグロースさせ続けるマーケティングの革新と拡張に取り組む。

 

味の素株式会社 食品事業本部 マーケティングデザインセンターコミュニケーションデザイン部
コミュニケーション戦略グループ PRチーム長 
植野 友生 氏

PR会社にて、外資系メーカー、国内メーカー、地方自治体等のPRコミュニケーションプランニングを行い、日用消費財メーカーにて美容ブランドのIMC/PR戦略を担当したのち、現職に至る。

 

■モデレーター
ビルコム株式会社 ストラテジックプランニング局 局長 長沢美香

SP業界からPR業界へ転身し20年以上にわたり企業のマーケティングに従事。BtoC系企業を中心に統合型のPR戦略を策定。「ゆとりうむプロジェクト」や「HER-SELF 女性の健康プロジェクト」など、複数企業が協働するプロジェクトも立ち上げ、責任者として推進中。

 

長沢:本日は、丸亀製麺様と味の素様2社のマーケティングPRに関するお話を伺います。よろしくお願いします。

南雲:トリドールホールディングスの南雲と申します。私はトリドールグループのコミュニケーション全般の統括をしています。よろしくお願いいたします。

植野:皆さま本日はよろしくお願いします。味の素株式会社の植野です。食品事業本部でPRコミュニケーションを担当しています。

長沢:ありがとうございます。本日はブランドとPRという大きなテーマですが、ブランド育成につながる戦略はどう作っているのか、 その戦略を実行に移して話題を生むPR戦術はどのように行っているのか、事例を交えながらお話いただきたいと思います。

丸亀製麺様は、新商品が世の中で大きな話題を作っています。 一方、味の素様はロングセラーの定番商品をたくさん開発されています。新しいニュースを生み出しにくい定番商品に対して、限られた予算の中でどのように注目を集めていくのか。皆様がお持ちの課題と似通ったところがあると思いますので、2社を比較するような形で聞いていただくと面白いと思います。

まず初めに、各企業の取り組みについてお伺いします。味の素様は、うま味調味料「味の素®」や和風だしの素「ほんだし®」など、ロングセラーブランドがたくさんあり、シェアも高いですよね。定番商品ではどのような課題があり、どういったPR戦略を設計されているのでしょうか。

植野:当社は、ロングセラー商品が多いため、改めて注目してもらうことが難しいと感じています。例えば当社の「ほんだし®」の場合、お味噌汁に使うもの、という市場での認識があり、固定化された使い方が世の中に定着しています。また、何かのきっかけでお客様が他ブランドへ流れてしまうこともあり、定番商品ならではの課題を感じています。

長沢:高いシェアを占めていても、ロングセラーならではの課題があるのですね。課題を打破するために、今回「地味調味料」というキーワードを開発されたということですので、後ほど詳しくお伺いします。

丸亀製麺様と言えば、昨年シェイクうどんが大きな話題になりました。今年はどのような取り組みやマーケティング戦略をされているのでしょうか。

南雲:今年は、うどんから生まれたドーナツ「丸亀うどーなつ」を6月から販売しました。発売開始から約3ヶ月で700万食を突破し、丸亀製麺史上最大の売り上げとなり、多くの方からご支持をいただいています。

我々は、日頃から消費者のインサイトを探求し続けて、インサイトをベースにマーケティング戦略を作っています。外食全体のインサイトは大きく2つあると考えています。一つ目は、人の手の温もりや手づくりです。本質的な価値としては、昨今DX化が進み、 効率化などが叫ばれる中で、逆に人の温もりや手づくりを求められていることです。讃岐の製麺所にいるかのような空間の中で手づくりのおいしいうどんを食べていただく体験価値だと考えています。二つ目は、新しい価値ですが、驚きやワクワク感を外食に求めていることです。この2つを大きなインサイトと捉え、本質的な価値と、新しい価値を創ることの両立をマーケティングで実践しています。

昨年はシェイクうどんという、うどんを振って食べるという体験を提供し、今年はうどんから生まれたドーナツといった新しい体験価値を提供することで、お客様にワクワクしていただき、外食の楽しさを知っていただこうという戦略を立てています。

長沢:本質的な体験価値と新しい体験価値をミックスさせていくのですね。この大ヒット商品、丸亀うどーなつは、どのように開発されたのでしょうか?

南雲:消費者インサイトの中で発見したことがきっかけです。当社のパーパスに「食の感動」がありますが、丸亀製麺らしい体験価値を提供するという軸で商品開発を行っています。ブランドの課題、事業の課題を考慮し、お子様や女性層などエントリーポイントを増やしたいという思いもあり、それが両立できるドーナツに辿り着きました。当社では、さまざまな商品で年間数百件のテストマーケティングを行っています。その中で1番良さそうなものを見極め、戦略を立てていくことを、今回の丸亀うどーなつの開発時にも実践しました。

また、感性の部分として、外食の楽しさを世の中に伝えたいという思いがあります。本来外食は楽しく、笑顔でワクワクする時間であると考えていますが、コロナ禍でそのような時間が減少するといった社会変化がありました。昨今、外食の頻度が下がっているものの、1回あたりに使う金額は増えているというデータもあります。社会変化を見ながら、自分の感性と照らし合わせて、どういう体験価値だったらお客様を動かすことができるかを考えて、仮説設計しています。

長沢:データを見て仮説設計するだけではなく、感性の部分も非常に重要だということですね。

南雲:データも感性もですが、そこから何を発見するのかが非常に大切だと思っています。データの表面だけ見ていても 答えは教えてくれないですよね。その裏側や、ここがもしかするとポイントなのかもしれない、といった気づきが重要です。そこに気づいて、何をファインディングスとして生かすか、データも感性も両方必要な要素だと考えています。

長沢:ありがとうございます。丸亀うどーなつの独自性やUSP(ユニークセリングポイント)、顧客提供価値についてはどのように設定されたか教えていただけますか。

南雲:うどんから生まれたという独自性と新規性を1番最初に打ち出していくわけですが、他にはないという独自性が非常に強いUSPだと考えています。USPの二つ目は、本格的な味です。当社のうどんのもちもちした食感を活かして、ドーナツも本格的な美味しさと食感を追求しています。また、手づくりしている安心感や素朴で懐かしいところもUSPとして設計しています。

顧客提供価値については、機能的価値だけでなく、機能的価値の奥にある情緒的な価値の2つを設定しました。ファンクショナルベネフィットは、当社が誇るうどんから生まれたからこそのもちもち食感ですし、そこにこだわって商品開発しています。エモーショナルベネフィットは、商品であるドーナツです。最近はおしゃれなドーナツが続々と登場していますが、丸亀うどーなつは、ちょっと懐かしくて素朴な雰囲気と体験価値をエモーショナルベネフィットとして、独自の価値を作っていきたいと考えました。

マーケティング戦略は至ってシンプルです。「Why」、「Who」、「How」、「What」の4つで常に戦略を立てています。この中に狙う市場も入れていくわけですが、当社はドーナツに関して後発ですし、レッドオーシャンしかないので、できる限り広い市場をターゲットとして考えました。甘いドーナツだけではおやつ市場でしか販売できないと考え、しょっぱいドーナツもあえて作っています。やみつきカレー味は、おやつ市場以外での市場を対象として商品設計をした背景があります。できるだけブルーオーシャンを取りに行くつもりで戦略を設計しました。

 

長沢:うどんと言えばお昼ご飯や主食の印象ですが、そうではない新しいカテゴリーに進出していったということですね。丸亀うどーなつの開発は、いくつものアイデアの中から選ばれて、ヒット商品になったことがわかりました。

続きまして、味の素様のお話をお伺いします。 冒頭で「地味調味料」というワードがありましたが、今回は、「ほんだし®」「味の素KKコンソメ」「丸鶏がらスープ™」のPR戦略についてもお聞きしたいと思います。この3つは私が子どもの頃からある印象ですが、どれも長い歴史がありますよね。ロングセラーの商品へどのように注目を集めていくのか、その戦略をお伺いできますか。

植野:「ほんだし®」は約50年、「味の素KKコンソメ」は約60年、「丸鶏がらスープ™」は約30年のロングセラーブランドです。現代社会で、いかに自分ごと化してもらうかを考えた時に、ブランドの強みだけではなく、社会の中でのブランドの立ち位置や、今の生活者のインサイト、困りごとに対してブランドとして何ができるのか、という3つの要素を含んだ提供価値を見つけることを意識して、こうした内容を伝えられる手段としてPRを位置づけ、戦略的にPRを行っています。 

長沢:なるほど。Whatを決める時には、ブランド視点だけではなく、社会課題や生活者のインサイトも見ているのですね。今回の「地味調味料」のPRを設計する上で、ターゲットはどのような方を想定されたのでしょうか。

植野:「地味調味料」のPRターゲットは、小さなお子様がいる方やこれから料理を始められる方などを想定しました。社会時流として、SNSでの映え疲れや、華やかさよりも堅実さが求められているといった若い世代のインサイトに着目して、コミュニケーション設計を行いました。

長沢:確かに、最近は映えよりリアルという風潮を感じます。リアルな日常を友達とシェアするSNSのBeRealも流行っていますよね。こうした社会背景を受けて、「地味調味料」のPRにおけるブランドの提供価値はどのように設定されましたか?

植野:「ほんだし®」「味の素KKコンソメ」「丸鶏がらスープ™」などの風味調味料の価値は、誰が作っても味付けに失敗しにくいこと、決して目立つわけではないものの、さまざまな料理の下支えになり、素材の味をきちんと引き立てることだと設定しました。「ほんだし®」は3種に燻し分けたかつお節から作られており、品質がいいからこそ土台となって料理の味を引き立てることができます。こうした価値を生活者のインサイトや社会の潮流とマッチさせました。

長沢:各社、商品の品質にはこだわってらっしゃると思いますが、こだわっていることを全面に打ち出しても、生活者にはなかなか伝わりにくいですよね。失敗しにくいことや、素材の味を引き立てるなど、生活者向けに翻訳されているところがポイントだと感じます。ほんだし、コンソメ、丸鶏ガラスープを総じて風味調味料と呼んでいますが、これらにはどのような価値があると言えるのでしょうか。

植野:地味だけど誰もが失敗せずに味の下支えができることを価値として定義しました。失敗せずに美味しい食事を食べられることや、家族との時間を過ごしてもらうための下支えとして、この風味調味料たちが役立つことを訴求しました。

長沢:なるほど。「ほんだし®」と言えばお味噌汁、「味の素KKコンソメ」はスープなど汁物に使う、といった印象がありますが、さまざまな料理の下支えになる調味料となれば、用途の幅が広がりそうですね。

植野:そうですね。今の時代に求められるのは、誰が作っても失敗しない地味にスゴい調味料だというところに辿り着き、最終的なキーワードとしてビルコムさんと一緒に「地味調味料」という言葉を開発し、市場創造記号として発信しました。

長沢: メーカー様の場合、ブランド主軸になりそうなところを丁寧に生活者インサイトと社会時流を捉えながら、風味調味料というカテゴリーそのものを地味調味料という新たなキーワードに置き換えて、生活者に発信していくところの工夫があったのですね。

南雲さんと植野さんのお話の中で共通点として、お二方ともターゲットインサイトを深掘りしているところと、社会事流に乗っているところがあると感じます。

南雲:先程のロングセラー商品をあえて「地味」と打ち出す味の素様の戦略は、非常に面白いと思ってお聞きしていました。その中で、若年層のお客様をどう獲得されているのか、ぜひ教えていただきたいです。

植野:コミュニケーションの考え方として、ブランドが50年60年大事にしている、味の素ならではの安心感や信頼などは変えてはならないと思っています。一方でお客様や社会は日々変化しているため、今の社会や生活者が大事にしている要素とブランドの大事にしている部分をかけ合わせたストーリーを作ることを、日々社内で話し合っています。安心感を持っていただきながらも、今の時代に合った施策を行い、新たな冒険をしていくことで、若いターゲット層の獲得につながると考えています。

長沢:私は企業のPRをご支援していますが、ブランドと共にお客様も高齢化していく中で、新しいお客様や若い層のお客様を獲得するにはどうすればよいか、といったご相談を多く受けます。南雲さんや植野さんは、若者のインサイトを把握するためにどのようなことを実践されていますか?

植野:さまざまなやり方がありますが、SNSでの生の声をよく見たり、若い世代に人気のインフルエンサーさんの意見を聞くことなどもしています。また、私たちの部門ではプロジェクトとして最近n-1の生活者インサイトリサーチも実施しました。今の流行を把握することももちろん大切ですが、表面化していない不満や欲求、困っていることまで把握することが重要だと思って行っています。

南雲:うどーなつの大きな戦略は私を中心に考えていますが、戦術を作るチームはターゲット層に合うよう若手の女性メンバーで構成しています。ターゲットの感性とマッチしたメンバーが戦術を練ることで、よりインサイトを把握したコミュニケーションが展開できると考えています。

植野:素晴らしいですね。先程の南雲さんのお話の中でデータと感性両方が重要だとありましたが、実際にデータを見てどのように仮説を立てられているのでしょうか。

南雲:まずはデータから違和感を見つけることでしょうか。データを見ていると、ここをもう少し深掘りして裏側まで見た方がいいな、と思う箇所があるんです。深掘りしてみて何もない時もありますが、新たな発見をする場合もあり、そこから仮説を立てています。あとは店舗に足を運ぶことで、お客様の会話や表情からの気づきがあり、そこから仮説設計をする場合もあります。お客様に突然インタビューすることもありますね。最近では、Webを使って、その日丸亀製麺を利用されたお客様をリクルーティングし、利用直後の感情をデプスインタビューすることも行っています。感動の瞬間は体験の直後や体験している瞬間だと思うので、できるだけ早いタイミングで利用客の意見や感想を聞くようにしています。

 

後編へ続く)

 

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書き手:コーポレートコミュニケーション局 川島弓奈

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