PR BLOG
PRブログ
- 2024年11月22日
- PRトレンド 、セミナーレポート
丸亀うどーなつ&地味調味料、話題を生むためのPR戦略に迫る! BILCOM DAY 2024 レポート(後編)
2024年10月11日、当社が主催するPRカンファレンス「BILCOM DAY 2024」を開催しました。今回は、BILCOM DAY 2024内で行ったトークセッション「丸亀製麺×味の素社が語る、話題を生むPR戦略の作り方」のレポート(後編)をお届けします。
前編はこちら。
■ゲスト
株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CMO 兼 KANDOコミュニケーション本部長兼
株式会社丸亀製麺 取締役 マーケティング本部長 南雲 克明 氏
コナミスポーツ、サザビーリーグ(東京・渋谷)などの事業会社で 様々なブランドのマーケティング責任者を歴任。2018年にトリドー ルHD入社。22年より現職。“感動(KANDO)”を起点に、感性とデータサイエンス両側面から持続的に選ばれる確率を高める 「感動ドリブンマーケティング」を推進。ビジネスと企業価値をグロースさせ続けるマーケティングの革新と拡張に取り組む。
味の素株式会社 食品事業本部 マーケティングデザインセンターコミュニケーションデザイン部
コミュニケーション戦略グループ PRチーム長 植野 友生 氏
PR会社にて、外資系メーカー、国内メーカー、地方自治体等のPRコミュニケーションプランニングを行い、日用消費財メーカーにて美容ブランドのIMC/PR戦略を担当したのち、現職に至る。
■モデレーター
ビルコム株式会社 ストラテジックプランニング局 局長 長沢美香
SP業界からPR業界へ転身し20年以上にわたり企業のマーケティングに従事。BtoC系企業を中心に統合型のPR戦略を策定。「ゆとりうむプロジェクト」や「HER-SELF 女性の健康プロジェクト」など、複数企業が協働するプロジェクトも立ち上げ、責任者として推進中。
長沢:PR戦略の部分は、ターゲットのインサイトを深掘りしていく、データを見ながら違和感を見つける、デプスインタビューやデータ分析をしっかりされることで、社会時流と結びつけていることがわかりました。ここからは、PR戦術についてお話を伺います。丸亀うどーなつと地味調味料をどのように世の中へ展開していったのでしょうか。
南雲:当社でのデータ分析を活用した結果、発売日前の一週間は、世の中へ存在感を作るために大きく盛り上げることが成功モデルだと考えています。当社はこの分析を「丸亀プレバズモデル」と呼んでいますが、 キャンペーンや新商品の成功は初動の高さに比例することが長年の研究でわかっています。データから成功モデルを型化していることで、目標に対しての合格ラインは間違いなく取れるようになっています。発売後のメディア露出の量やお客様がソーシャルメディアへ投稿する量などで、過去のデータから約25パーセントは左右されると考えているため、発売前の1週間が鍵になってきます。
うどーなつの発売では、事前にできるだけ喫食体験をしていただくことで、若年層のUGCを創出していこうと思い、渋谷の道玄坂でポップアップショップを行いました。また、渋谷109の交差点の前でサンプリングのイベントを行い、多くの若い方を中心にうどーなつを体験をしていただいたことで、UGC(一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツ)を上げることができました。メディアへの露出とお客様に実体験いただくイベントをセットで行ったことが、今回の成功ポイントだと思います。
長沢:実体験からSNSで話題化させ、同時にマス媒体での露出も作っていくというとこですね。記者発表会もされたのでしょうか?
南雲:うどーなつは、新商品発表会を渋谷本社の上にあるホールで行いました。約140名ぐらいのメディアの方にお越しいただき、商品発表後10日間で908件の露出を獲得しました。キー局と地方局のテレビ露出もありましたが、昨年発売したシェイクうどんと比較すると、新聞やWebでの露出が大幅に上回り、売上にも大きな成果が出ています。
長沢:SNSの話題化ではその瞬間は盛り上がりますが、同時にマスでの報道があることで生活者は信頼感や、有名媒体が語っていることによる安心感を持つのかもしれません。ダブルでコミュニケーションすることにより、さらに話題化する傾向がありますよね。
南雲:3ヶ月で700万食という結果を振り返ると、勝てる戦略には「What」をどのように作り、商品の世界観をどうコミュニケーションしていくかが重要だと感じます。あとは発売前の露出です。ここに成功の鍵はあるなと改めて感じています。
長沢:最初に「What」を作り、それを「How」の部分でしっかり設計して実行するところに勝機があったのかなと感じました。ありがとうございます。続きまして、味の素様の地味調味料です。新しいカテゴリーを社会に伝えていくということですが、こちらはどのようにコミュニケーションされたのでしょうか。
植野:地味調味料という言葉だけを聞くと、あまり意味がわかりませんよね。当社がこの調味料は地味にスゴイ、と訴求しても共感を得られないので、第三者の方々に共感していただき、じわじわ広げていく戦術を取っています。
まず最初のフェーズを「ささやき期」と呼んでいるのですが、味の素の社名や商品を出さずに、地味の話題化のみに注力しました。「地味にスゴイ」といったドラマのタイトルもありますが、「地味」というワードが世の中で注目を集めていることを明文化し、地味トレンドの顕在化を行いました。次に、家で食べるのはほっとする味が大切であり、料理の味付けは地味が良いというところを生活者調査結果をもとに打ち出していきました。そのあとは「地味調味料」のカテゴリ認知と、下支えをしてくれる地味調味料が大事であることを訴求し、最後に地味調味料のメリットを訴求しました。そして地味調味料と言えば、「ほんだし®」「味の素KKコンソメ」「丸鶏がらスープ™」であるという商品の露出につなげる、という形で、順を追って徐々に広めていきました。
具体的な施策のファーストステップとして、KOLの方にコメントをいただいたり、プレスリリースを発信することで、メディアの方にも地味がブームとしてきていることを訴求し、興味を持っていただいたことで露出へとつながりました。次にファクト開発です。メディアの方やインフルエンサーは地味調味料が何なのかがわからないため、地味調味料の特徴を言語化して、誰もが使えるものであることを可視化しました。
地味調味料を使うことで誰もが失敗しない、という内容はメーカー側が決めるのではなく、第三者の方々に共感してもらい発信していただく必要があるので、官能調査で特徴の数値化を行いました。実際にチャーハンを作る際に適正量の2倍の「ほんだし®」と「塩」でそれぞれ作ったところ、「ほんだし®」は「味のバランス・統一感」が適正量とほぼ変わらない結果となりました。多めに入れてしまっても「ほんだし®」は味付けに失敗しにくいと言えます。こうした数値的なものやエビデンスがあることで、メディアも報道がしやすいと考えています。
また、調味料カオスマップを作成しました。調味料は世の中にあふれているため、「ほんだし®」「味の素KKコンソメ」「丸鶏がらスープ™」が地味調味料として素材を支えるものであると打ち出した場合、存在価値が認知されにくいと考えたからです。カオスマップにすることで、当社の地味調味料が下支えに重要な調味料であることがポジショニングされ、立ち位置を明文化することに成功しました。これがSNSなどでも話題化され、メディアでの報道につながりました。
長沢:KOLと開発したファクトは、どのように発信されたのでしょうか。
植野:アーンドメディアとシェアードメディアの両軸で広げていく際に使用するとともに、受け皿があった方が良いと考え、地味調味料のLPを作りました。また、地味なイメージのないゆうちゃみさんを起用してPR発表会を実施しました。ゆうちゃみさんが料理を始めたばかりということもあり、地味調味料を使うことで誰が作っても失敗しないことをご自身から発信していただきました。こうして、理想の見出しにするために、逆算してコンテンツを作成して発信しています。このような取り組みで、ある一定数の認知は取れたと思っています。
長沢:植野さんがPRを経験して見えてきたことや、広告的なコミュニケーションとの違いはどのようなところでしょうか。
植野:商品を知っていただくという意味では広告も大事だと思っています。しかし、広告だけでは、味がぶれないことや品質がいいからこそ誰が作っても失敗しない、といった地味調味料の本来伝えたいメッセージを伝えきれない部分があります。アーンドメディアとシェアードメディアを通じて、第三者がファクトを語って発信してくれる構造を作れるところが、PR活動の意義だと考えています。
長沢:PR戦術というテーマをふりかえると、丸亀製麺様はプレバズ分析といった、データ分析やデータ活用が非常に長けていると感じました。味の素様は第三者発信とファクト開発をすごく重要視されています。
南雲:メディアのインサイトまで捉えてPR設計されていますよね。メディアが取り上げたくなるようなエッセンスをふんだんに盛り込んでいますし、生活者が話題にしたくなるような地味調味料のクリエイティブもたくさんあり、調味料カオスマップも新しいアイデアで緻密に設計されていると感じました。味の素様の社名や商品を出さずに話題作りを行うことに対して、怖さや不安などはなかったですか?
植野:生活者のインサイトや社会潮流を調査して確信があったので、怖さや不安はなかったです。情報が波及した際の理想の見出しを常に意識していますし、語られ方の理想像が明確にあったので、そこに向かって邁進するのみでした。
長沢:詳しくお聞かせいただき、ありがとうございます。最後に今後の展望をそれぞれお伺いできますか。
南雲:現在も行っていますが、パーパスである食の感動、感動体験を軸にして、顧客体験と従業員の体験価値、ソーシャルグッドの3つとブランドバリューをスパイラルアップさせるようなマーケティングコミュニケーションを行っていきたいと考えています。そして感動で成長する、外食産業の新しいビジネスモデルを作っていきたいです。
植野:今後も社会と生活者とブランドにとって魅力的な情報発信を通じてファン作りに取り組んでいきたいと考えています。私たちが所属するマーケティングデザインセンターでは「Swing The Bat」を掲げており、打席に立ってどんどんバットを振っていこう、という取り組みを行っています。当社はロングセラー商品が多いですが、既存商品の新価値を創造し続けることに、これからも意欲的に取り組んでいきたいです。
長沢:丸亀製麺様、味の素様、それぞれ独自の価値を見い出し、話題をつくり新しい価値観や行動を起こすPRを実行されていました。南雲さん、植野さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
ビルコムは、企業の独自価値に着目しながら、事業に貢献するコミュニケーション施策を行う会社です。新商品、既存商品のPR設計など、お気軽にご相談ください。
書き手:コーポレートコミュニケーション局 川島弓奈