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- 2025年07月23日
- PRトレンド
気候変動を事業機会に変える「異常気象マーケティング」とは?PR視点で注目する4つの新市場
連日暑い日が続いていますが、気象庁によると、2024年の日本の平均気温は統計開始以来、最も高い値となりました。今夏も全国的に平年を上回る厳しい暑さが予測されています。このような気候変動は、私たちの生活に深刻な影響を与える社会課題ですが、一方で、変化に伴って生まれる、生活者の「お困りごと」に寄り添うことで、これまでにない事業機会を創出できるチャンスでもあります。
本記事では、「異常気象」をどのようにビジネスへ結び付けていくか、最新の企業事例と2025年夏に注目すべきPRテーマを交えながら解説します。
視点の転換:気候変動は「リスク」から「事業機会」へ
気候の極端化は、消費者の行動やニーズを大きく変化させます。かつては「天候不順=リスク」と捉えられがちでしたが、近年、この変化を商機と捉える企業が増えています。
2024年10月に株式会社帝国データバンクが上場企業を対象に行った調査では、猛暑による影響について情報開示を行った102社のうち、実に6割にあたる63社が、売上増加や新商品開発といった「プラスの効果」があったと回答しています。
出典:株式会社帝国データバンク(2024年10月21日)「今年の猛暑」影響調査
これは、多くの企業が気候変動を「課題解決型の新習慣を提案する機会」と捉え、既存の商品やサービスの新しい価値を提示したり、新商品を開発したりすることで、事業機会を拡大していると考えられます。
事例に学ぶ「温暖化に負けない経営」2つのアプローチ
気候変動という大きな潮流に適応し、成長を遂げる企業の戦略は、大きく2つのアプローチに分類できます。
【消費トレンド編】生活者の「お困りごと」に寄り添い、新習慣を提案する
気候の変化によって生まれた、生活者の新たなニーズを的確に捉えるアプローチです。
- 味の素株式会社:「五季(ごき)そうさまプロジェクト」
9月になっても続く残暑を「まだなつ」と名付け、火を使わずに作れる「まだなつレシピ」を提案。気候の変化に具体的な名前と解決策を与えることで、新たな食習慣を創造しています。
- 株式会社未来屋書店:「本屋で涼活(りょうかつ)」
「涼しい書店で快適に過ごす」という夏の新しいライフスタイルを提案。猛暑で外出先が限られる中、書店の価値を再定義し、新たな顧客体験を創出しました。
【経営革新編】供給リスクを「イノベーション」で乗り越える
2025年7月12日の日経ビジネスでも報じられていたように、気候変動による原料高騰などの供給サイドの危機に対し、技術革新で正面から立ち向かうアプローチです。
- 不二製油グループ本社株式会社:「ゼロカカオ」チョコレート
異常気象による影響で、チョコレートの原料となるカカオ豆の価格高騰という危機に対し、カカオを一切使わないチョコレートを開発。「代替食材はおいしくないと思われたら終わり」という強い信念のもと、従来品に劣らない品質を追求し、新たな市場を切り拓いています。社会的に意義があるから、という甘えを捨て、味や食感で消費者の満足を勝ち取る姿勢が伺えます。
2025年7月7日 日経ビジネス【不二製油が生んだ「ゼロカカオ」チョコ カカオ豆高騰の救世主へ】
- サントリーホールディングス株式会社:「グリーン水素」事業
「水と生きる」を企業理念に掲げるサントリーは、「水から生まれ、水に還る」エネルギーであるグリーン水素の社会実装に取り組んでいます。国内最大となる水素製造設備を建設し、自社工場を最初のユーザーとすることで広告塔の役割を担い、社会実装をリードしながら新たな収益事業を育てています。また、災害対策にも役立つ可能性があるといった付加価値も提示しています。単なるCSR活動や改正省エネ法規制対応にとどまることなく、自社の理念と強み(水、自然エネルギー)を活かして社会課題の解決に貢献し、そこから新たな事業を創出しています。
2025年6月11日 日本経済新聞【サントリーHD、グリーン水素の製造販売へ参入 27年に】
【PR視点で予測】2025年猛暑で注目の4大テーマ
こうした経営戦略を踏まえた上で、今年の夏、特に生活者の「お困りごと」が顕在化し、新たな市場が生まれると予測される4つのテーマをご紹介します。
- 室内砂漠
強力なエアコンによる室内の乾燥。ドライアイや呼吸器系の不調といった健康課題に対し、「エアコンと〇〇の併用で快適湿度に」といった新しい常識の提案です。
- 夜間熱中症
熱中症の約4割を占める、睡眠中のリスク。高機能寝具はもちろん、「快眠と健康を守る夜の新習慣」として、就寝前の過ごし方を総合的に提案するライフスタイル提案が求められます。
- うつ熱
子どもや高齢者にとって特に危険な、体内に熱がこもる状態。冷却グッズのような直接的な対策に加え、「そもそも熱を溜めない身体づくり」といった予防するための生活習慣などが注目されそうです。
- ナトカリ比
塩分とカリウムの摂取バランスという専門的な指標です。具体的な食事法やレシピの提示が考えられます。
価値を社会の「共感」に変える戦略PR
不二製油やサントリーのような革新的な取り組みであっても、価値が生活者や社会に正しく伝わらなければ、普及の壁にぶつかります。従来品に劣らぬ品質と分かりやすい付加価値を、どのように社会の共感へつなげていくか。そこにPRの真価があるのではないでしょうか。
当社は、企業の持つ技術や製品を、生活者が自分ごと化できるストーリーへと翻訳し、社会に新習慣や文化を根付かせる「市場創造PR」を数多く支援させていただいています。
例えば、旭化成ホームプロダクツ様のZiploc®を活用した「下味冷凍」や「冷凍貯金」のプロジェクトでは、「忙しい毎日でも、美味しく健康的な食事を手軽に」という生活者のインサイトに応え、”冷凍でストックしておく”という新しい食生活の習慣を社会に定着させました。
ビルコムの市場創造PR事例:旭化成ホームプロダクツ「Ziploc®」下味冷凍プロジェクト・冷凍貯金プロジェクト
気候変動は、すべての企業にとって避けて通れない課題です。この大きな社会変化をマイナスと捉えるか、事業機会と捉えるか。その分かれ道は、戦略的なコミュニケーションの有無にあるのかもしれません。
ビルコムは、単なる情報発信に留まらず、データに基づいた戦略的なPR活動を通じて、企業の市場創造を支援しています。 その強みは、独自の診断技術と伝達技術にあります。
診断技術:これまで曖昧になりがちだったブランド力をデータによって可視化します。独自の指標である「PRパワー」の考え方に基づき、当社で開発・提供している広報効果測定ツール「PR Analyzer」の報道データを用いて測定。必要なPR戦略や現在の課題をデータで客観的に確認できます。感覚的だったブランドの概念を明確なデータで捉え、効果的な戦略立案に繋げています。
伝達技術:PRパワーの測定を通じて課題を明確にすることで、次に打つべき効果的なPR戦略のパターンを見出すことができます。ビルコムには20年以上蓄積されたPR戦略の豊富なノウハウがあります。広報業務に関わるデータ分析やメディア露出状況から企業のブランド課題を可視化し、数多くの成功事例に基づいた打ち手のパターンを蓄積しています。
自社の課題を把握したい、あるいはブランド力を高めたいけれど何から始めたらよいか分からない、といった場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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書き手:コーポレート戦略局 川島弓奈