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  • 2025年06月16日
  • PRトレンド 、PRノウハウ

速報!バルセロナ原則4.0の解説と考察~広報効果測定の羅針盤を深堀りする~

はじめに

コミュニケーション効果測定・評価の国際機関AMEC(International Association for Measurement and Evaluation of Communication)は、2025年6月10日〜12日に開催されたオーストリア・ウィーンでのグローバルサミットにおいて、PR効果測定の新たな指針となる「バルセロナ原則4.0」を発表しました。2010年の初提唱以来5年ごとに刷新されてきた本原則は、今回が4度目のアップデートとなります。

本記事では、速報として「バルセロナ原則4.0」の内容と、3.0からのアップデートポイントを解説するとともに、どのようにPR実務に落とし込んでいくべきかを考察しています。なお、以前に「バルセロナ原則3.0」の解説もしていますので、ご興味がある方は是非ご覧ください。(前編後編

 

バルセロナ原則4.0

まずは今回発表されたバルセロナ原則4.0を確認しましょう。下記が7つの原則です。(※英文は原文、和訳はビルコム)

1. Setting clear, measurable objectives is a critical prerequisite for effective communication planning, measurement and evaluation.

明確で測定可能な目標設定は、効果的なコミュニケーション計画、測定、評価に不可欠な前提条件である。

 

2. Defining and understanding all stakeholder audiences are essential steps to plan, build relationships and create lasting impact.

すべてのステークホルダー・オーディエンスを定義し理解することは、計画、関係構築、永続的なインパクト創出のための不可欠なステップである。

 

3. Comprehensive communication measurement and evaluation should be applied to all relevant channels used to understand and influence audience stakeholders.

包括的なコミュニケーション測定と評価は、ステークホルダー・オーディエンスを理解し影響を与えるために使用されるすべての関連チャネルに適用されるべきである。

 

4. Effective measurement and evaluation of communication require qualitative and quantitative analysis.

コミュニケーションの効果的な測定と評価は、定性的および定量的分析を必要とする。

 

5. Invalid measures such as advertising value equivalents (AVEs) should not be used. Instead measure and evaluate the contribution of communication by its outcome and impact.

広告換算値(AVEs)のような無効な測定方法は使用すべきではない。代わりに、コミュニケーションの貢献度をそのアウトカムとインパクトによって測定し評価すべきである。

 

6. Measurement and Evaluation Should report outputs, outcomes, and impact related to the organization and stakeholder audiences.

測定と評価は、組織およびステークホルダー・オーディエンスに関連するアウトプット、アウトカム、およびインパクトを報告すべきである。

 

7. Ethics, governance and transparency with data, methodologies and technology builds trust and drives learning.

データ、方法論、およびテクノロジーにおける倫理、ガバナンス、および透明性は、信頼を築き、学習を促進する。

 

バルセロナ原則4.0の全体感

バルセロナ原則4.0のレポート全文を読んでみると、アップデートの全体感としては以下3点が挙げられます。

1. PR実務への適用しやすさを配慮

各原則がより分かりやすく、日々の業務に適用しやすくなるよう、具体的なガイダンスが公式資料に追加されています。また、AMECが提供しているPR活動の効果を測定するためのフレームワークである、「統合評価フレームワーク(IEF)」のステップに沿うよう原則の順序が変更され、目標設定から始まり、分析、評価、そして倫理・ガバナンスへと流れる一貫したストーリーを提供しています。

IEFのフレームワーク活用例

※AMECが提供しているフォーマットを元に、架空の食品会社を想定してビルコム作成

 

2. 現代のコミュニケーション環境への適応

オーディエンスの多様化、データガバナンス、AIの影響、ステークホルダーを中心としたインパクトの重要性など、今日の複雑なコミュニケーション環境を反映しています。

 

3. PR効果測定に関する重要な概念の変化

以下の点などを強調しています。

  • 「アウトプット vs アウトカム」ではなく、「アウトプットとアウトカムの両方を含めた測定」を通して、組織へのインパクトを示す重要性
  • オーディエンスを一方的な受け手ではなく「価値の共創者」として捉えた、双方向のコミュニケーションの重要性
  • 静的なキャンペーンだけでなく、継続的で反復的なコミュニケーションサイクルにおける測定の重要性
  • データ源の倫理、ガバナンス、透明性(特にAIの使用、データの正確性、著作権保護など)に、より強い重点を置くこと

 

バルセロナ原則3.0からのアップデートポイント

次に各原則のアップデートについてです。3.0からの変更を確認していくと、7つすべての原則が変更されています。

1原則ずつ深堀りをしていくと、とても長いブログになってしまうため、特に注目した「原則4:定性・定量分析の統合」「原則5:広告換算値(AVEs)の否定と代替策の提示」について解説します。

 

原則4:定性・定量分析の統合

▽3.0との比較(原文のみ記載)

3.0: Communication measurement and evaluation should include both qualitative and quantitative Analysis.

 

4.0: Effective measurement and evaluation of communication require qualitative and quantitative analysis.

 

▽解説

・3.0からの変更点として、should includeからrequireへと表現が強化され、定性・定量分析の統合が「含めるべき」推奨事項から「必須」要件へと変化しました。「効果的な (Effective)」という言葉も加わり、より実効性のある測定のための条件として位置づけられています。

・詳細説明において、AIや自然言語処理ツールの活用、特に定性データの生成において、その利便性と同時に、常に人間による確認と批判的な分析で正確性を検証することの必要性が注意点として挙げられています。

 

原則5:広告換算値(AVEs)の否定と代替策の提示

▽3.0との比較(原文のみ記載)

3.0: AVEs are not the value of communication.

 

4.0: Invalid measures such as advertising value equivalents (AVEs) should not be used. Instead measure and evaluate the contribution of communication by its outcome and impact. 

 

▽解説

・「広告換算値」の単なる否定から一歩進んで、「代替としてアウトカムとインパクトで測定すべき」という指針が明確に示されました。また、「無効な (Invalid)」という言葉が加えられ、その測定方法の不適切性がより強調されています。

・限定的な状況下で広告換算値を使用せざるを得ない場合でも、その「限界と計算方法を明確かつ透明に定義」し、「価値」「インパクト」「ROI」といった言葉を使わないよう厳しく言及しています。

・ビルコムでは、PR Analyzerのユーザー様に利用している定量指標をアンケートしていますが、広告換算費の利用率は減少傾向にあるものの、54%の広報担当者が利用しています。広告換算費の代わりとしては、リーチ数の採用が進んでいます。

PR Analyzerで採用されている定量指標(2024年ビルコム調査)

なお、AMECの公式Ebookでは、7原則それぞれについて、「Why it Matters(なぜ重要なのか)」「Why it's evolved(なぜ進化したのか)」「What to Do(何をすべきか)」「What not to Do(何をしないべきか)」が説明されています。より詳細を確認されたい方はご覧ください。

PR実務への適用についての考察

ここまで、バルセロナ原則4.0のポイントを解説しましたが、日頃から多くの広報担当者様とお話しする中で感じるのは、これらの「理想的な測定と評価」を完璧に設計し、日々の業務の中で実行していくことの難しさです。バルセロナ原則が示すレベルに到達するためには、時間、予算、人材、そして専門知識といった、さまざまなハードルが存在するのが現実ではないでしょうか。

 しかし、バルセロナ原則は、決して理想論として提示されているのではなく、「Why(なぜ)」と「What(何をすべきか)」を「How(どのように)」に落とし込むために、以下のようなツールを提供しています。

また、当社でもPR Analyzerを通して効果測定指標や分析のヒントを提供しています。その中でも直近反響が大きいのが、アウトプットとアウトカムの相関分析ができる「行動変容分析機能です。(原則6の「重視するアウトカム測定」に関連)

本機能では、Googleサービスと連携することで「指名検索数」「検索・クリック数」「新規ユーザー数」のWebのアクセスデータと掲載数やリーチ数などのアウトプットデータとの相関を分析することができます。

「行動変容分析機能」の画面イメージ

  

まとめ

 バルセロナ原則4.0は、「羅針盤」としてPR効果測定のあるべき姿を示しています。しかし、アクション、アウトプット、アウトカム、インパクトをすべて網羅し、完璧に測定・分析することは簡単ではなく、またそれを1ツールで実現できるサービスも存在しません。

 だからこそ、大切なのは「スモールステップから始め、確実にできることから着実にステップアップしていく」ことではないでしょうか。

具体的には以下のステップで進めるのが現実的なアプローチだと考えています。

  • ステップ1:「アクション(広報活動自体)」と「アウトプット(掲載数・リーチ数)」の分析
  • ステップ2:「アウトプット」と「アウトカム(Webアクセス・問い合わせなど)」の分析
  • ステップ3:「売上貢献やブランド価値向上といったインパクト」への貢献度の分析

バルセロナ原則4.0が示す「PRの未来」は、決して手の届かない理想ではありません。

考え方を抑え、正しい設計と適切な手法を採用することで、どんな組織の広報担当者でも、データに基づいた戦略的なPRを通した事業貢献を実現できると信じています。

 

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書き手:

ビルコム株式会社 PR Tech局 プロダクトグロース部 部長 兼 プロダクトマネージャー 

宮澤 佳来(みやざわ よしき)

 

2016年ビルコム入社。メディアプランナーを経て、PR Analyzerの立上げに参加。その後、モバイルアプリ向けツールを提供する企業のカスタマーサクセスマネージャーを経て、2020年ビルコムに復帰。PR Analyzerのカスタマーサクセス組織の立上げ・リーダーを担った後、現在はプロダクトマネージャーとして開発部門を統括。

 

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