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  • 2025年12月11日
  • セミナーレポート

事業価値の再定義~業界のトップランナーが描く未来~

2025年10月2日、当社が主催するPRカンファレンス「BILCOM DAY 2025 - PRで創るブランドの第一想起」を開催しました。今回は、BILCOM DAY 2025内で行ったトークセッション事業価値の再定義~業界のトップランナーが描く未来~のセミナーレポートをお届けします。

 

■ゲスト

株式会社羽田未来総合研究所
代表取締役社長執行役員
大西 洋 氏

1979年に伊勢丹入社。三越常務執行役員MD統括部長、伊勢丹常務執行役員等を経て、2012年三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員、三越伊勢丹代表取締役社長執行役員に就任。2018年6月より、日本空港ビルデング取締役副社長執行役員、同年7月より羽田未来総合研究所代表取締役社長に就任。羽田空港内外で新しい価値創造を目指し、地方創生、文化・アートの発信に力を入れている。

 

旭化成ホームズ株式会社
DX・IT推進本部 本部長 マーケティングプリンシパルエキスパート
中村 干城 氏

1993年に旭化成ホームズに入社後、住宅営業、展示場店長、支店長などを経て、2008年よりマーケティング部門へ。広告宣伝、販売促進、営業推進業務に携わる。2023年より現職。マーケティング領域のプリンシパルエキスパートも兼務し、旭化成グループ全体のマーケティングDX推進を担う。現部門では顧客接点のデジタル化やデータ活用による顧客体験価値の向上、業務プロセスの効率化に注力している。

 

■モデレーター

ビルコム株式会社
ストラテジックプランニング局 局長
長沢 美香

旭化成ホームプロダクツ、マツキヨココカラ&カンパニー等、toC系企業を中心に統合型のPR戦略を策定。「ゆとりうむプロジェクト」や「HER-SELF女性の健康プロジェクト」など、複数企業が協働するプロジェクトも立ち上げ、責任者として推進。

長沢:本日は羽田未来総合研究所の大西様と旭化成ホームズの中村様から、両社が進める「事業価値の再定義」をテーマにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

大西: 皆さんこんにちは、羽田未来総合研究所の大西です。私は40年間百貨店に在籍した後、2018年から羽田空港を運営する日本空港ビルデングで勤務していました。現在は羽田未来総合研究所で、地方創生を中心にシンクタンクを行っています。

中村:皆様はじめまして、旭化成ホームズの中村です。私は1993年に入社し、住宅営業、支店長と現場最前線で過ごしてきました。2008年から本社のマーケティングに異動し、広告宣伝や販売促進、営業推進部長としてコミュニケーション戦略を担っていました。2023年にDX・IT推進本部へ異動し、現在はマーケティングとDX・ITの融合を担っています。当社では「住宅提供」から「LIFE支援」へと事業の拡張を行っていますので、本日はそのお話ができればと思います。

 

長沢:ありがとうございます。では早速お話を伺っていきましょう。まず、羽田空港を情報文化発信拠点としていくために、具体的にどのようなことを推進されたのでしょうか。

大西:私は前職の百貨店時代から現職に至るまで、常に「変革」を推進してきました。変化の激しい現代において、世の中の潮流に対応するためには、組織や事業の変革は不可欠であると考えています。

2018年に私が着任した当初、羽田空港は交通インフラとしての機能に特化しており、羽田空港利用者の95%は搭乗客でした。ある役員からは「我々のミッションは乗客の安全でスムーズな移動であり、乗客以外の方が増えることは本質的ではない」という声もありました。しかし、当時の日本空港ビルデングの企業ポートフォリオは、飛行機が飛べばお客様が来て、飛ばなければ来ない、という形で航空旅客(航空会社)にあまりにも依存しすぎているという大きな課題を抱えていたのです。当時のトップからも「これを変えたい」という強い意向があり、将来的に「7割を既存事業、3割を新しいこと」とするポートフォリオ変革を目指していました。だからこそ私は、既存の枠組みにとらわれるだけでなく、空港そのものをブランディングし新たな価値を創造する必要性を強く感じていました。様々な施策を通じ、現在では利用者の15%が航空機への搭乗を目的としないお客様で占められるようになりました。

長沢:その変革の背景には、より大きな視点があったと伺っています

大西:変革の背景には、日本が置かれているマクロ環境への強い危機感があります。日本のGDPはドイツに抜かれて世界4位に後退し、今後インドやインドネシアにも抜かれると予測されています。また、1989年には世界の時価総額ランキング上位を日本企業が占めていましたが、現在ではその面影はなく、国際的な競争力の低下は明らかです。

このような状況下で日本が世界に誇れるものは何か。それは「ものづくり」です。特に地方に根付く伝統技術や匠の技は、世界から高く評価されるクリエイティビティの源泉です。この潜在的な価値を産業化することが、国力を高める鍵となると確信しています。

また、インバウンド戦略も転換期を迎えています。2030年に6000万人という「量」の目標を追うだけでは、インフラの問題に直面します。重要なのは「数」より「質」への転換です。日本の本質的な魅力を伝え、高付加価値な体験を提供することで、結果としてGDPへの貢献度も高まります。

そして、「高付加価値な体験」の源泉こそが、日本が世界に誇る「ものづくり」です。特に地方には、伝統的な技術力や匠の技、伝統工芸といった素晴らしい生活文化が今も息づいており、これらは世界から見ても非常に高いクリエイティビティとして評価されています。

こうした考えに基づき、羽田空港を日本の魅力を世界に発信する拠点とするための具体的な取り組みを進めています。その一つが、空港内に開設した「ジャパンマスタリーコレクション」です。

現在、地方には後継者不足や販路開拓の問題で失われかねない、本当に良いものがたくさんあります。日本の高い技術力で作られた西陣織が海外ブランドに買収されるといった事例もあり、この現状に危機感を抱いています。そこで、日本のラグジュアリーブランドをオールジャパンで創造・発信していく拠点として、2023年10月にショップを立ち上げました。

さらに、アートも日本の重要な魅力の一つです。羽田空港で若手アーティストのオークションを企画したところ、海外のコレクターからも大きな反響がありました。これは、羽田空港が単なる交通拠点ではなく、日本の文化・芸術を世界に発信するプラットフォームとなり得ることを示しています。

 

長沢:ありがとうございます。まさに変革を体現し、新たな価値を創造したことで、現在の羽田空港へとなったのですね。では次に、中村さんが住宅の提供からライフ支援へと事業を広げられた経緯についてお聞かせください。

中村:当社のへーベルハウスは「ALL for LONGLIFE」というタグラインを掲げています。元々、頑丈で丈夫なものづくり、つまりハードウェアとしての「家」のロングライフを追求してきました。

しかし、この10年で持ち家市場は4割も縮小しています。こうした厳しい市場環境の中、2019年にブランドの再定義を行いました。

そこで改めて問い直したのが「ロングライフとは何か」ということです。我々が本当に提供したかったのは、単なる「家」の長寿命化だけではないのではないか。むしろ、そこに住まうお客様の「命(LIFE)」「暮らし(LIFE)」「人生(LIFE)」、この3つのライフそのものを支え続けることではないか、と考えました。そして、タグラインにある「ALL」という言葉の解釈も深めました。これは単に家のことだけでなく、我々とお客様との「お付き合い=関係性」そのものもロングライフであるべきだ、と。

この再定義こそが、ハードウェア(モノ)の提供だけでなく、お客様の人生の様々なステージで起こる多様なニーズに応え続ける「ライフ支援(コト)」へと事業を広げる、我々の大きなきっかけとなりました。

長沢:ライフ支援では、具体的にどのようなサービスを展開されているのでしょうか。

中村:24時間365日の受付体制やメンテナンスといったベースの活動に加え、災害時に被害が大きそうなエリアのお客様にいち早くアプローチする仕組みや、健康サービス、販売金融や相続信託事業など、暮らしにまつわる様々な悩みにワンストップで応えるコンサルティングデスクを設けています。

これらのサービスは、会員向けのWebサイトやアプリを通じて提供し、お客様との接点を強化しています。結果として、この3年で会員数は2倍近くになり、ご紹介で新たにご契約いただく数も非常に伸びています。お客様にしっかり寄り添うことで、お客様との関係を維持する「ロングライフマーケティング」へと変化し、新たなご需要が生まれるという好循環ができています。

長沢:お二方とも大きな変革を成し遂げられていますが、困難はなかったのでしょうか?

大西:正直、変革ができたとは思っていません。私自身、前職ではやり過ぎだと言われていました。変革を本当に根付かせるには、トップの強い意志だけでなく、同じ志を持つ仲間をどれだけ作れるかにかかっています。人間は楽な方に流れるものですから、常に危機感を持ち、新たな価値創造に挑み続ける文化を作ることが何より難しいですね。

中村: まさに「組織の壁」はありました。しかし、経営層が現場と何度も対話を重ね、共に歩む姿勢を見せてくれたことが大きかった。1年、2年と経つうちに、これが正しい道だと皆が理解してくれ、一気に乗り越えることができました。

長沢:デジタルを活用した顧客との関係構築を通じて、新たな事業機会を創出しているのですね。最後に、お二人の変革を支える思想と今後の展望についてお聞かせください。

大西:日本全体の「国力」の低下、特に若い世代が自国に希望を持てていないという現実は我々が直視すべき根本的な課題であると考えています。ある調査では、日本の20代で自国の将来を明るいと考えているのは18%に過ぎません。

これからの日本を支える若い世代が希望を持てないような国でいいのか。私は、彼らが誇れる国にする環境を整えることこそが、我々世代の最大のミッションだと考えています。そのためには、従来の経済活動だけでなく、これまで価値が見過ごされがちだった文化やアートといった「目に見えないもの」の価値を正しく評価し、産業化していくことが不可欠です。

この大きなミッションを前提とした上で、我々の具体的な「今後の展望」としては、データも活用しながら、1億2000万人の国民、そして4000万人のインバウンドのお客様、その一人ひとりのニーズに限りなく個別に応えていきたいと考えています。お客様一人ひとりのニーズに限りなく個別に応え、我々の思想やストーリーを、PRの力を使って丁寧に発信し続けていくことが重要です。

中村:我々の根底にあるのは、安心・安全な住まいづくりを通じて、日本の住宅を「社会ストック」として価値あるものにしていくという思想です。スクラップ&ビルドの文化から脱却し良いものを長く大切に使う文化を、お客様と共に創っていきたいですね。

今後は、異業種とも連携しながら、「ハレ(非日常)」と「ケ(日常)」を融合させるような新しい暮らしの価値を提案していきたいと考えています。例えば、趣味を家で楽しめるガレージハウスや、共働き世帯の家事を楽にするような提案など、社会課題の解決につながるような事業を展開していきます。

ここでもPRの力が重要になると考えています。まさに今日ご一緒しているビルコムさんと取り組ませていただいた『Long Life is Beautiful』の活動もそうですが、個社で発信するのではなく、我々の思想に共感してくださる様々な企業を巻き込み、世の中ごととしてムーブメントを起こしていきたいです。

長沢:業界は違いますが、お二人に共通するのは、既存事業の枠組みを超えて社会全体の価値向上を目指す視点と、その思想を社内外に浸透させるためのPRやコミュニケーションの重要性です。両社の事例は、企業が成長するためのヒントが多く詰まっていました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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