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  • 2018年03月22日
  • セミナーレポート

なぜ明治「ザ・チョコレート」は成功したのか?元日経MJ編集長が語る、ヒット商品の条件とは


 

フォトジェニックな被写体を前にすると、「インスタ映えだね」と言う人が増えました。「インスタ映え」という概念は今や老若男女に浸透し、商品・サービスを作る側もインスタ映えを意識せずにはいられない時代です。

ただ、インスタ映えとは表面的な話であり、もっとシンプルに言うと「ひと目見てわかりやすいかどうか」だと話すのは、元『日経MJ』編集長で、日経新聞社 デジタル事業 広告・IDユニット長の三宅耕二さん。

今回、三宅さんが登壇された、日本経済新聞社とビルコムの共同セミナー「PRで売上やブランドを伸ばした商品とは」の「元MJ編集長が語る、ヒット商品の条件とは」をお届けします。


■登壇者 三宅耕二さん

日本経済新聞社 デジタル事業 広告・IDユニット長。 
1985年、早稲田大学政経卒、日本経済新聞社入社。 
編集局大阪社会部、産業部、流通経済部などを経て、2011年より『日経MJ』編集長に。京都支社長、顧客サービス本部長を務め、17年4月から現職。マーケティングの専門紙『日経MJ』の編集に約15年携わる。 
著書に『ダイエー落城』(共著、日本経済新聞社)がある。

 

ストーリーマーケティングの時代は過去のものに

分厚い取り扱い説明書を読み込まなくても、直感的に使えるかどうかが、商品のヒットを決める分かれ道だと、三宅さんは話します。

「それを商品の作り手、買い手、すべての人へ端的に示したのがスティーブ・ジョブズです。2008年にiPhone 3Gが登場して約10年。その頃から、UI/UXが優れていて、直感的に使えることが、デジタル系のサービスだけでなく、一般消費財の世界でも重要視されるようになりました」(三宅さん、以下同)

では、iPhone 3G以前の世界はどうだったのでしょうか。三宅さんは「ストーリーが重要視されていた」と振り返ります。

「Webに掲載する膨大で複雑なストーリーを通じて、生活者に商品やサービスのことを伝えるのが一般的な方法でした。しかし、今、そのスタイルは過去のものとなっています」

 

 

スマホの普及が人々の行動を根こそぎ変えた

背景には、スマートフォンの普及が生活者の行動を根本から変えたことがあります。スマホが存在していなかった時代、パソコンでWebを閲覧するのが主流でした。しかし、今やWebサイトへのアクセスも半数以上、中には9割以上がスマホからのアクセス、というメディアも少なくありません。

各種SNSやWeb検索、メール、アプリ、ゲーム......実際、私たち現代人は実に多くのことをスマホで処理し、自分の分身であるかのように、常時スマホを持ち歩いています。

ただ、スマホには良くも悪くも、「コンパクト」な側面があります。パソコンやタブレットなどと比べてはるかに小さい画面は、長文や、ひと目では全体像を把握しづらい細かいビジュアルを見るのに適してはいないといえます。

「だから、パッと見て概要をつかめる商品やサービスでない限り、大ヒットには結びつきづらい。生活者がスマホを閲覧できる時間は限られていて、さまざまな企業が生活者の可処分時間の奪い合いをしている、と言っても過言ではありません。ファーストインプレッションに引きがないと、なかなか売れない時代になっているのです」

 

 

なぜ明治「ザ・チョコレート」は大成功したのか 

『日経トレンディ』2017年ヒット商品ベスト30で、2位を獲得した明治「ザ・チョコレート」こそ、現代におけるヒット商品のあり方を象徴する商品ではないかと三宅さんは語ります。

同商品は、チョコメーカーである明治が、「本物のチョコ」をお客さまに提供したいと、厳選したカカオ豆で作られました。"初代"はそうやって、味で勝負を仕掛けたものの、生活者にうまく響きませんでした。現在、市場で大人気を獲得しているのは"二代目"です。

味に自信があったのに、知名度も売れ行きも上がらない......。悩んだ開発側は板チョコレート界では前代未聞ともいえる「縦型デザイン」で売り出しました。すると、斬新なデザインが功を奏し、購入者らが自らすすんでインスタグラムなどのSNSにアップするようになり、空前の大ヒットに。

「他の板チョコと比べて単価が約2倍でありながら、1年弱の間に3,000万枚売り上げるという記録を残しています。パッケージに惹かれ、商品に魅力を感じた生活者が、"自主的にPR"したことで、さらに認知度が上がり、販促につながった好事例のひとつです」

  

 

真の意味での「顧客起点」で考えているか 

明治ザ・チョコレートに限らず、ヒット商品の大半はSNS、なかでもインスタグラムに投稿されています。だからといって、商品やサービスがインスタ映えすることを意識しすぎるのは本末転倒、と三宅さん。

「SNS上で多くの『いいね!』獲得を求める"承認欲求消費"が過熱しています。それゆえ企業の多くが今まで以上に、商品やサービスの見た目のインパクトを重視するようになりました。ただ、外面が印象的であっても、本体そのものが良くなければ、ヒットに結びつくことはないでしょう」

明治ザ・チョコレートも、『日経トレンディ』2017年ヒット商品ベスト30で6位にランクインしたペットボトルコーヒー「クラフトボス」も、どちらも見た目がおしゃれで、たしかにインスタ映えする商品です。

とはいえ、それが美味しくないとリピーターはつかず、ヒットにはつながりません。発売元のサントリー食品インターナショナルは1月12日、2017年4月に発売開始したクラフトボスが、販売が1,000万ケース(2億4,000万本)を突破したと発表しました。

開封したら早めに飲まなければ味が劣化する缶コーヒーとは異なり、「ちびちび・だらだら」飲んでも美味しさをキープできるという特徴が、同社が狙ったIT企業勤務の若い世代に刺さりました。

「これらの勝因はすべて、マーケティングの世界で長年言われてきた『顧客起点』を踏まえて作られていることにあります」

今さら顧客起点なんて......と思う方もいるかもしれませんが、改めて顧客起点とは何か考えると、顧客のリアルな声を商品やサービスに活かすこと。顧客と接点を持たなければ、顧客起点を機能させることはできません。

「スマホの普及によって、人々の消費行動が変化した今の時代にマッチした顧客起点を考える上で大事なのはパーソナライズです。パーソナライズで顧客とのエンゲージメントを強化し、1回きりではなく継続的に顧客とコミュニケーションをとることがより重要になっています」

既に一般化しているパーソナライズの代表的な機能といえばリコメンド。ECサイトなどで購入・閲覧履歴などに基づいた商品やサービスが表示されるのは当たり前になりました。

「その人の関心に近い商品やサービスばかりを表示するのは、これまでのレコメンド機能に過ぎません。その人の関心を超え、仕事で必要な分野や教養として知っておいたほうがいい分野など、AIを活用し、二段構え、三段構えでのレコメンドをしていくことが、未来的な顧客起点の考え方といえるのではないでしょうか」

ストーリーで訴求する時代は過ぎ、パーソナライズがより進化していくことが予想される今。AIなどの技術を活用すれば、そう遠くない未来、新しい形でのレコメンド機能が登場することは容易に想像できます。コミュニケーションの変化を読み取りながら、新しい顧客起点の考え方を実践していきたいものです。


取材・文/池田園子

Twitter:@sonoko0511
DRESS編集長、フリー編集者/ライター。著書に『はたらく人の結婚しない生き方』。
編集協力した書籍に『すべての女は、自由である。』(経沢香保子)、『さよならインターネット』(家入一真)など。

 

 

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