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- 2026年08月28日
- PRノウハウ 、PRトレンド
価格競争から脱却!ジップロック®が「アウトドアの新定番」になるまで 【前編:戦略編】
2026年7月28日、MCEI(マーケティング・コミュニケーションズ・エグゼクティブズ・インターナショナル)東京支部が主催する定例研究会にて、旭化成ホームプロダクツ株式会社 マーケティング部長の浅田昌吾氏と、当社 第1PR事業部 事業部長の長沢美香による対談セミナー「成熟市場でなぜ伸びた?ジップロック®を"アウトドアの新定番"へ。シェア争い・価格競争からの脱却 界隈PRが生んだ新需要創造の舞台裏」が開催されました。

MCEI東京支部は1969年に設立されたマーケティングの実務家組織で、マーケティングを学ぶ人々を広く支援するため様々な研究会を開催しています。当社は法人会員として参加しています。
今回はジップロック®を"食品保存"からさらに一歩先の"アウトドアの必需品"へと引き上げた、界隈PRの舞台裏を語っていただきました。市場が成熟し、PB(プライベートブランド)との価格競争が激化する中で、いかにして「価格ではなく価値で選ばれるブランド」を構築したのか。両者の対談形式で、そのプロセスをお届けします。
登壇者紹介
浅田昌吾氏(旭化成ホームプロダクツ株式会社 マーケティング部 部長)
1992年、旭化成工業株式会社に入社。7年間樹脂フィルムの営業に従事。1999年に旭化成ホームプロダクツ株式会社へ異動し、営業としてイオン等の広域チェーン、近畿・中部地区のリージョナルチェーン、EC、海外、業務用とBtoCビジネスを幅広く経験。2014年から2017年までマーケティング部にてジップロック®、クックパー®のブランドマネージャーを担当。2023年より現職。
長沢美香(ビルコム株式会社 第1PR事業部 事業部長)
旭化成ホームプロダクツ、マツキヨココカラ&カンパニーなど、toC企業を中心に統合型のPR戦略を策定。「ゆとりうむプロジェクト」や「HER-SELF 女性の健康プロジェクト」など、複数企業が協働するプロジェクトの立ち上げ・推進も担う。
成熟したブランドが抱えていた3つの壁
長沢:原材料費の高騰と人手不足により、多くのメーカーが値上げと顧客離反リスクの間で揺れています。「特売でしか買われないブランド」から「価値で選ばれるブランド」への転換ーそれが今回のテーマの出発点でした。ジップロック®が直面していた壁を教えてください。
浅田氏:ジップロック®が抱えていた壁は大きく3つありました。
①機能は伝わっても、価格の壁を超えられない
「オープンタブ」「ダブルジッパー」など独自機能でPBと差別化してきたものの、生活者調査では機能評価が高くても、購入時には「PBや100均で十分」という価格判断が優先されがちでした。
②「食品保存」イメージからの脱却と、その先のコモディティ化
8年前、共働き世帯の増加に着目した「下味冷凍」施策で、ジップロック®は「食品保存」から「調理補助」へと役割を広げ、生活者の約半数が実践するまでに浸透しました(詳細は前回のセミナーレポート)。しかしその成功の先には、PBの台頭による市場全体のコモディティ化という新たな壁が立ちはだかりました。
③ターゲットは長年、女性中心だった
ジッパーバッグの使用率は既婚女性73%に対し既婚男性57%・未婚男性35%とまだ開拓余地がある一方、「信頼」を購買理由に挙げる比率は男性7〜8割に対し女性60%台。男性の方がブランドを信頼して使い続ける傾向がデータからも見えていました。
チャネル自体はスーパーやドラッグストアなど既存の流通網を維持したまま、伝えるメッセージとターゲットを男性へ転換しました。実は「食品保存からライフスタイルブランドへ」という発想は10年前からあったコンセプトで、2001年にも一度アウトドア展開を試みて大失敗した経験があります。当時は「ジップロック®の名前があれば売れる」という思い込みが強く、何を伝えるべきかが定まっていませんでした。その反省を踏まえ、今回は「納得感のあるものを選ぶ、清潔感があっておしゃれな男性」という世界観を丁寧に設計し直しました。

Z世代だけじゃない!「界隈消費」とキーパーソン「KOI」を活用した新・PR設計
長沢:そこで着目したのが「界隈」という概念です。共通の興味関心でつながるゆるやかなコミュニティを指します。近年はこの「界隈消費」が活発化しており、データでは約8割の人が何らかの界隈に属しているとも言われています。若年層に限った現象ではありません。界隈にはどのような特徴があるのでしょうか。
浅田氏:各界隈に明確な境界線があるわけではなく、領域同士が重なり合っている点が特徴です。学校の部活動のように一つの枠にとどまるのではなく、個人の志向に応じて複数の界隈を横断して活動する特性があります。
長沢:明確なリーダーが存在しない中で、キーパーソンとなる「KOI(キーオピニオンインフルエンサー)」が各コミュニティで影響力を持っているのですね。
浅田氏:KOIとは、特定の分野で高い専門性と影響力を持つ人物です。料理界隈のもあいかすみ様、登山界隈の髙倉悠祐様をはじめ、各分野にKOIが存在します。
長沢:KOIの方々が発信することで、界隈内に話題が広がり、共感が形成されていきます。
浅田氏:KOIが「この商品はこう使うと便利」と発信すると、コミュニティ内で話題化し「自分も使ってみよう」という空気が生まれます。結果としてその商品を使うことが界隈のデファクトスタンダードとなり、新たな需要が創造されるという流れです。
長沢:今回の界隈PRでは、主に3つの施策に取り組みました。1つ目は「KOIによる推奨(お墨付き)」の獲得、2つ目は「発信内容への共感形成」、3つ目は「マスメディアを通じた信頼性の獲得」です。

(後編へ続く)
書き手:コーポレートブランディング部 川島弓奈



