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  • 2018年10月01日
  • セミナーレポート

「マツキヨ」の事例から学ぶ、既存市場の競争軸を変えるブランド戦略とは~生活者へのブランドイメージを浸透させるPR戦略~

2018年9月6日にマツモトキヨシホールディングス・乙幡満男氏をスピーカーに迎え、セミナーを開催しました。大手企業様を中心に多くの方にお申込み頂き、大盛況のうちに終えることができました。本ブログでは、当日の講演内容を抜粋してご紹介させていただきます。

 


 

これまで、低価格や品質訴求を重視してきたプライベートブランド(以下、PB)市場。それが、今や低価格・高品質であることは当たり前になり、差別化を図っていくことが難しい状況となりました。

 

そんなPB市場において、マツモトキヨシはPBのリブランディングに着手。PBのみならず、コーポレートブランドやストアブランドの価値も高めることに大きく貢献しました。

「マツキヨでしか買えないPB」という競合との差別化を実現したその裏側を、マツモトキヨシ 営業統括本部 乙幡満男氏にご紹介いただきました。

 

また、第二部では、ビルコムより第1IMC局 局長の長沢美香が、マツモトキヨシのPB『matsukiyo』のPR事例を交え、成熟市場で差別化を後押しするPR戦略をご紹介しました。

 


第1部 「PBが変える、コーポレートブランドの価値」

 

スピーカー:株式会社マツモトキヨシホールディングス 営業統括本部 乙幡 満男氏

 

乙幡 満男(おとはた みつお)氏
株式会社マツモトキヨシホールディングス 営業統括本部 
1974年生まれ。東京都小平市出身。クレアモント大学院大学(ドラッカービジネス スクール)にてMBA取得。大手小売業のPBコンサルティング経験を活かし、2014年 マツモトキヨシホールディングスに入社。同社PBをリブランディングした「matsukiyo」 立ち上げに従事。 2児の父で、休日はもっぱら息子とサッカーをして過ごす。

 

講演に先立ち、Twitterをきっかけに爆発的ヒットとなった、『matsukiyo』の「EXSTRONGエナジードリンク」、「EZSTRONG ZEROエナジードリンク」をご来場いただいた皆さまと試飲。ポイントは何と言ってもこの液色!

 

 

 

緑(EXSTRONGエナジードリンク)と紫(EXSTRONG ZEROエナジードリンク)の鮮やかな色に、皆さんとても驚かれていました。

ーPBは価格訴求時代を経て、品質訴求時代にあった

PBはかつて、「低価格商品」の代名詞でした。乙幡氏はそれを「PB第1世代」とし、PB市場の時代変遷を解説しました。

 

■1980年代~ PB第1世代
第一次価格訴求:とにかく「安さ」を重視

■2000年代~ PB第2世代
第二次価格訴求:引き続き安さを重視したラインナップ
        NB(※)を追随したパッケージなど、こだわりがないものが多かった
          ※NB=ナショナルブランドの略

■2011年代~ PB第3世代
品質訴求:消費者のマインドが「安ければいい」から「吟味したい」にチェンジ
     パッケージデザインの統一化などが進む

 

乙幡氏「PBを並べてイメージ調査をすると、"安い"や"品質もいいものがある"など機能的なイメージは出てくるのですが、情緒的なイメージが全然出てこない。そこはまだPBが大手のナショナルブランド(以下、NB)さんに勝てない大きな要因なのではないかと思いました。」

 

―マツキヨは、かつてのマツキヨらしさ ― 革新性と卓越性を失いつつあった

乙幡氏「マツモトキヨシは、斬新で面白みのあるCMを実施していたこともあり、"マツキヨに行けば何かがある"というイメージを持っていただけていました。しかし、2013年に行われたイメージ調査では、"革新性"と"卓越性"が非常に低下していました。ドラッグストアの競合の中から抜け出し、"楽しく斬新で新しいことをしようとしているマツキヨ" というイメージを再度持ってもらわなければならないという課題があったのです。」

 

2014年当時、マツモトキヨシには「MK CUSTOMER」というPBが存在していました。しかし、認知度調査において、マツモトキヨシの認知率は90%以上にも関わらず、「MK CUSTOMER」の認知率はわずか7.4%だったそうです。

 

乙幡氏「店舗のブランドの認知度がこれだけあるのに、PBの認知度がこんなに低いのはもったいない。上手くコミュニケーションができていないのではないかと考えました。」

 

―PBは「ブランド」であり、低価格商品の代名詞ではない

乙幡氏「PBはやはりブランドなのです。低価格商品でもないし、パッケージにPBのロゴを付けるだけでもない。ここが大きなポイントだと考えています。」

 

乙幡氏はPBの役割として、下記をあげました。

 

①競合との差別化
②利益貢献
③お買い得価格での提供
④来店客数・購買点数増大
⑤ストアブランドのイメージ向上
⑥企業理念の具体化
⑦ユーザーニーズに応える

 

乙幡氏「1つは競合との差別化です。普段マツキヨに来る以外の人も呼び込みたいので、"マツキヨでしか買えない商品を持つ"というのはとても意味があります。そして、ストアブランドのイメージ向上も非常に重要です。良い商品があればストアブランドのイメージも上がっていきますし、企業価値の向上にももちろん繋がっていきます。」

 

―『matsukiyo』誕生:新PBは、"第4世代のPB"を目指した

乙幡氏「私は新時代の PB を"第4世代"と定義しています。新時代のPBはデザイン性があり、情緒的価値を付加できる。マツキヨのPBでも、情緒的価値を含めたブランド訴求をしていきたいと考えました。」

 

■2015年代~ PB第4世代
新時代のPB:情緒的価値訴求

 

乙幡氏「第4世代のPBはお客様からすると、"NBだから""PBだから"、などという区別をつけない時代になっています。」

 

乙幡氏「マツキヨがお客さんに求められていることとして、"美・健康に役立つ情報発信""お客さんの思い""確かな商品開発""常識破り"などを定義しました。そして、ブランドを"毎日の暮らしをより美しく、健やかに楽しく彩るアイデアを利かせたブランド"と定義し、新しいPBを『matsukiyo』としました。」

 

 

―新PBの方向性決定後、社内の環境を整備
『matsukiyo』の方向性が決まったところで、乙幡氏は社内の環境を整備しました。

 

①ロゴやデザインシステム・ガイドラインの作成
・商品カテゴリに応じて統一感を持たせることを目的とした
・マツキヨらしさを出すために、「キ」の19度の斜角度でパッケージデザインをフォーマット化、
 社内で「マツキヨスラッシュ」と呼ばれている



 

 

②デザインを監修する体制の構築と実施
 ・全商品商品のブランドコンセプトチェックを実施
③ブランドに基づく商品開発の強化
 ・『matsukiyo』の品質基準、ブランドコンセプトや世界観に合わないものは
  ノーブランドとして展開

 ・売上不振になった場合はデザインを見直したり、終売にしたりするなど、すぐに対応
④ブランドコミュニケーションの強化
 ・インナーコミュニケーションを強化し、人事部と協力して従業員教育を実施
 ・ブランドブックを作成し全店舗へ配布

 

 

―PBリニューアル後、売上が6倍になった商品も 
乙幡氏「ブランド変更後、PBの売上は上がり、PB比率も10%を超えました。」 
ブランド全体としてネットでも話題になり、中でもボディミルクはリニューアル後、売上がなんと6倍になったそうです。 

乙幡氏「今後、PBは第5世代に続いていくだろうと我々は考えています。第5世代のPBはより機能や情緒に特化したものが出てくると考え、開発を進めています。」

 

第2部 生活者へのブランドイメージを浸透させるPR戦略


スピーカー:ビルコム株式会社 第1IMC局 局長 長沢 美香 

ビルコム株式会社 第1IMC局 局長
消費財メーカー系のクライアントを中心にPRコンサルティングを実施。 第1IMC局を統括し、各クライアントにおけるPRコミュニケーションの品質管理に従事。 直近の実績として、大手食品メーカーのIMCプロジェクト統括、ECサイトサービスのIMCプロジェクト統括を務め、コンサルタントとして活躍。

 

―『matsukiyo』の課題:リブランディングにより実績を出しているにも関わらずメディアに取り上げられていなかった
長沢「『matsukiyo』のトイレットペーパーは、ラジカセを担いでいるように見えるなどのユニークなパッケージとして、昨年発売されました。このトイレットペーパーは、生活者が"トイレットペーパーを持ち歩くのが恥ずかしい"というインサイトに応え、開発されたものです。このデザインは世界でも注目を集め、英国の「D&AD賞」の最高賞「イエローペンシル賞」など数々のデザイン賞を受賞していました。しかし、メディアでの報道も少なく、生活者の間でも話題になっていませんでした。」

 

 

―PR活動開始後、報道量が大幅に増加

長沢「当社がPR活動を始めて数ヶ月、メディア向けの企画提案が実り、マーケティングの先端同行動向を伝える『日経クロストレンド』ではマツキヨPBのリブランディング特集を獲得しました。その他にも、『Mart』などの生活系メディア、エンタメ系メディアでも幅広い切り口でこのトイレットペーパーをフックにしたマツキヨPB戦略が取り上げられ、報道量が一気に増加しました。」

 

 

―PR戦略の舞台裏

今回は以下の3ターゲットに向けPR活動を実施し、統合的なコミュニケーションでマツキヨブランドのイメージ転換を図る戦略を実行しました。 
①メディア
②マーケター
③消費者

 

―PR活動①:メディアへのアプローチ

長沢「メディアの記者に求められる情報は、"ブランドの持つファクトをに、メディアが記事にしたい視点を取り入れて企画立案する"ということが重要です。当社では、記事化されやすい項目を"ニュース7つの要素"と整理しています。このニュース7つの要素がより多く起用されている企画が、メディアの視聴率、部数、PVの引き上げに貢献しているのです。当社ではこの"ニュース7つの要素"を軸にファクトを編集し、多様なメディアでの記事制作をサポートしています。」

 

 

―PR活動②:マーケターへの認知獲得

長沢「toC商材のPRを実施する場合、商品にフォーカスした戦術が一般的ですが、今回はリブランディングのプロセスやその実績が明確であったため、まずは人物にフォーカスを当て、ビジネス系、マーケティング系の媒体へのPR活動に注力いたしました。また、マーケターの注目率の高いセミナー登壇をサポートし、スポークスパーソンを通してリブランディングの事例を紹介する場を作りました。」

 

 

 

―PR活動③:生活者への認知獲得

長沢「一方、現在の生活者はメディア以外のSNSなどからも多くの情報を取得しています。マツキヨPBの革新的なイメージを再度醸成するためには、直接生活者へアプローチすることも重要と考えました。そこで当社では、『matsukiyo』オウンドコンテンツのSNS公式アカウントのテキストをライティングさせていただくなどのサポートも実施しています。」

 

 

―活動の結果、競合よりも掲載数が増加

長沢「たった数ヶ月ではありますが、PR活動のレビューを実施いたしますと、ほとんどメディア掲載していなかったPBの記事が活動直後から増加しているのがわかります。企業にはその戦略や改革、ブランドマーケティングなど、メディアが取り上げたい(=生活者が知りたい)情報が多く存在しています。当社ではその隠れたブランド資産を生活者の求める情報にコンテンツ化し、あらゆる手法で世に届けていくサポートを実施しています。」

 

 

<h2第3部 パネルディスカッション

 

乙幡氏と長沢のパネルディスカッションの様子を一部ご紹介いたします。

 



―『matsukiyo』のリブランディングが認知されてきた今、PR活動をどのように進めていくか 

乙幡氏「PRは今まで通り引き続き行っていきますが、NBのフォロワーになっては意味がない。何か新しいことがなければニュース性が出ないので、商品に情緒的価値や機能的価値をもっと出していかなければと思います。我々としてもそのような商品を出す予定はあって、もっとその幅を広げていきたいなと考えていますし、ビルコムさんからPRに関しての提案があれば行った方がいいと考えています。」 

長沢「モノを欲しがらない生活者が多く存在し、また商品やサービスもコモデティ化する中で、ブランドが差別性を打ち出していくことは非常に困難になってきています。そんな中、コミュニケーションのプロフェッショナルとしては"ブランド資産=ファクト"をできるだけ"コンテンツ化"し生活者に伝えていくということが次のフェーズだと考えています。例えば、ファクトを動画化する、記事化するなど、情報のコンテンツ化、そしてそのストック&発信が必要ではないでしょうか。」 

―リブランディングを実施する際のPRのポイントとは
長沢「商品やサービスの保有するファクトを"ことば"とともに伝えていく手法が最適かと考えています。その、"ことば"とは市場を創り上げる"市場創造記号"です。商品やサービスの価値の軸を変換させたり、新習慣を創り出したりすることで新たな市場を創り、その結果競合優位性を打ち出していくという考え方です。今後も『matsukiyo』ブランドのメッセージを社会ゴト化し、『matsukiyo』ブランドの革新性、卓越性を伝えていければと思います。」

 

  

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