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  • 2026年05月20日
  • PRノウハウ

コーポレートブランディングとは何か ー選ばれる企業になるためのPR戦略

はじめに:「良い会社」であることと「選ばれること」は別の問題である

多くの企業が抱える矛盾があります。「品質は高い。社員も誠実。取り組みも充実している。でも、なぜか競合他社に顧客や人材を奪われている」。

この問いへの答えは、PRの世界では明確に存在します。問題は企業の実力ではなく、評判の設計にあるのです。

コーポレートブランディングとは、企業そのものの信頼と共感を構造的に育て、商談・採用・投資家獲得といったあらゆる成果につなげる経営戦略です。本記事では、生活者調査データと実際の企業事例をもとに、選ばれる企業になるためのPR戦略を解説します。

 

1. なぜ今、コーポレートブランディングが必要なのか

企業を取り巻く4つの構造変化

日本企業の経営環境は、次の4点で根本的に変化しています。

①コスト上昇による値上げ

②顧客の離反リスク増

③深刻な人手不足

④採用競争の激化

 

2. 調査データが示す「企業ブランド」の購買・採用への影響

株式会社ネオマーケティングとビルコム株式会社が共同で実施した生活者調査(n=714)から、コーポレートブランディングの効果を示す重要なデータが明らかになっています。

購買決定における企業ブランドの力

Q.機能・価格が同じ場合、どの企業から買うかを決める理由

図:機能・価格が同じ場合、どの企業から買うかを決める理由の結果。上位は「特にない」45.7%、「多くのメディアでポジティブに紹介されている」18.2%、「企業のビジョンや社会貢献への姿勢が明確である」17.2%。

ポイント:45.7%の生活者は、コーポレートブランドで選んでいないことがわかります。しかし、残り54.3%の生活者は製品の品質や価格ではなく、企業のビジョンや社会貢献への姿勢、メディアでポジティブに紹介されているなど「外から見た企業の評判」が選択の決め手になっています。

 

企業への好感が生む行動変容

Q.企業の「社風」や「姿勢(考え方)」を知る機会として、影響が大きいと感じるメディア

 

図:企業の「社風」や「姿勢(考え方)」を知る機会として、影響が大きいと感じるメディアの結果。「特にない」37%、企業の公式サイト(ホームページ)20.4%、テレビCM(コマーシャル)20.4%。

ポイント:37%が「特にない」と回答しています。これは、情報接触自体が起きていない可能性を示しています。残り63%の生活者は、テレビ番組やCM、ニュースサイトやSNSなど、様々なチャネルの影響を受けていることがわかります。

 

Q.就職や転職を検討する場合、企業ブランド(社会的な評判や企業のイメージ)をどの程度重視するか

図:就職や転職を検討する場合、企業ブランド(社会的な評判や企業のイメージ)をどの程度重視するか。「非常に重視する」16.1%、「やや重視する」42.7%、「あまり重視しない」23.8%、「全く重視しない」17.4%。

ポイント:求職者の58.8%が企業ブランドを重視して就職・転職先を選んでいることがわかります。「良い会社」であることを外部に発信できていない企業は、優秀な人材の候補リストにそもそも入れない可能性があります。

 

3. 「企業の評判」の定義が変わった

かつての評判vs現在の評判

企業の評判を形成する要素は、時代とともに変化しています。

かつて:遵法性 × 業績 × 製品力
現在:倫理性 × 社会価値 × 対話力

つまり、「法律を守って、業績が良くて、良い製品を作る」だけでは、もはや選ばれる理由にならないということです。

 

企業への信頼・好感を生むきっかけ

Q.「企業を好き・信頼できると感じるきっかけ」

図:企業を好き・信頼できると感じるきっかけ。「商品やサービスの品質が良い」36.1%、「特にない」31.2%、「以前から利用しており親しみがある」24.8%、「不祥事などがなく、誠実なイメージがある」23.7%。

調査結果を見ると、不祥事などがなく誠実なイメージがある(倫理性・23.7%)、企業の経営理念やビジョンに共感できる(社会価値・16%)、店頭やカスタマーサポートの従業員の対応がいい(対話力・19.9%)の3要素が、現代の評判形成のコアであることが裏付けられています。

 

4. 「対話力」こそ、評判格差を生む最大の要因

自社の取り組みが「届いていない」現実

調査で明らかになった最も重要な示唆は、「思った以上に、自社のことが届いていない・伝わっていない」という事実です。

どれだけ良い取り組みをしていても、それが生活者・求職者・投資家に届かなければ存在しないのと同じです。評判形成において最もボトルネックになりやすいのが「対話力」です。

 

対話力の3つの構成要素

対話力は、以下の3段階のファネルで可視化できます:

① 網羅的発信(情報開示)

 企業名の記事露出数「知られているか」

② 積極的発信(主体性)

 企業名が主役の記事数「自分ごとで語られているか」

③ 双方向コミュニケーション(エンゲージメント構築)

 企業名×SNS波及数「共感・拡散されているか」

ビルコムでは、PR効果測定ツール「PR Analyzer®」を活用し、競合比較を含む対話力スコアを可視化。企業ごとにどのレイヤーに課題があるかを特定したうえで、打ち手を設計しています。

 

5. 「選ばれる企業」を設計するSOEP統合型PR戦略

S=Social、O=Owned、E=Earned、P=Paid

コーポレートブランディングの実行フレームワークは、Earned(第三者による報道・口コミ)を基軸に、Social・Owned・Paidを組み合わせたSOEP統合型PRです。

なぜ「Earned」が起点なのか

Earnedが最も重要な理由は、読者の信頼性が高いからです。

広告は一方的な情報のためスルーされがちです。一方、メディアの編集記事として取り上げられた情報は、信頼できる情報として受け取られます。コーポレートブランディングにおいて、マスメディアPRが最優先されるのはこのためです。

 

メディアに取り上げられるための「ファクト」の重要性

記者やディレクターは「なぜ今これを報道すべきか」「読者・視聴者にとって価値ある情報か」「何が新しいのか」を考えています。このニーズに応えるのがファクトです。ビルコムが定義するファクトの種類は以下の通りです。

ブランドの特徴:ユニークな開発工程、時流に合った提供価値、保有ノウハウ

ブランド実績:売上実績、受賞歴、ランキング

ブランド活動:SDGsの取組、他社とのコラボ、社内施策

調査データ:生活者アンケート、座談会、実証実験

専門家コメント:お墨付きコメント、時流・ニーズの説明

メディアPRは、「伝えたいメッセージ」を「時流+ファクト+読者実利」に変換した「編集企画」として提案することで、はじめて掲載確率が上がります。

 

SOEPの全体構造

信頼性の高い第三者発信を得意とする「Earned」をメインとして、PRメッセージを発信します。

E(Earned):第三者によるマスメディアPR ← 信頼の源泉

S(Social):生活者の声を活用したSNS PR

O(Owned):PR素材のオウンドメディア展開

P(Paid):広告枠・オウンドを活用した体験型PR

支援実績について:コーポレートブランディングの具体的な支援事例はこちらをご覧ください。

 

6. コミュニケーション設計の3原則—届けるだけでは不十分

コーポレートブランディングで「なぜ効果が出ないのか」の多くは、コミュニケーション設計の失敗にあります。正しいコミュニケーション設計には3つの原則があります。

原則1:効く相手を選ぶ
誰に届ければ行動変容が起きるか。ターゲットを明確にし、ステークホルダー別にパーセプション(認識)を設計する。

原則2:効く順序を設計する
認知 → 信頼 → 共感 → 行動、という段階を意識する。今どのフェーズにいる顧客・求職者に、どのメッセージを届けるべきか。

原則3:効くチャネルに投資する
調査によれば、企業の社風や姿勢を知るメディアとして最も影響力があるのは「テレビ番組」「企業の公式サイト」「ニュースサイト・Webメディアの記事」です(上位3位)。チャネルの優先順位を間違えると、どれだけ予算をかけても届きません。

 

7. 実績事例:マツモトキヨシのコーポレートブランディング

事例ページ https://www.bil.jp/case/details/26

課題の背景

かつて「業界1位」だったマツモトキヨシは、ドラッグストア業界の激化する競争の中で、次の課題を抱えていました。

  • 「マツモトキヨシ」のイメージが古い
  • ニュースは多数あるが、ブランドイメージが生活者に伝わっていない
  • 「matsukiyo」のPBがプチプラコスメと同列に見られている

さらに、「斬新」「おしゃれ」「人に勧めたい」といった購買理由を調査したところ、出てくるブランドにマツモトキヨシが入らないという結果が判明しました。

 

PRの核心:PBの革新性を「ファクト」で伝える

ビルコムは「matsukiyo」のPB(プライベートブランド)を、PRの核と位置づけました。

PBのトイレットペーパーが世界的に権威あるドイツの「iFデザインアワード」を受賞したものの、当初はメディア掲載ゼロ。ここからメディアリレーション構築と企画持ち込みを開始した結果、受賞翌月には25件、その次の月には90件のメディア掲載を獲得しました。

 

人物PRによるイメージの転換

商品PRに加え、自社の人物を通じたリブランディング発信(人物PR)にも注力。「マツキヨ=先進的」というイメージを、人物フォーカスのメディア露出によって定着させていきました。

その結果、ついに「プラザ」「ロフト」と並んで紹介される状況が生まれ、業界内外でのブランドポジションが変化。「Japan Branding Awards」では2017年38位→2018年34位→2019年29位と、ランキングが着実に上昇しました。

さらに、ブランド力の向上がココカラファインとの業務提携にも寄与。「ドラッグストアの中でマツキヨを選んだ理由はPBだった」という評価まで得るに至りました。

 

8. コーポレートブランディングのROIが見えない本当の理由

「コーポレートブランディングはROIが見えない」とよく言われます。しかしこれは、評判形成が不十分であることが原因です。

評判が「信頼」の段階にとどまっているうちは、購買・採用・提携への行動変容は起きません。信頼が「熱量(エンゲージメント)」に変わって初めて、ビジネス成果として現れます。この「信頼→熱量」への変換プロセスを設計するのが、統合型PRの役割です。

ビルコムが支援したマツモトキヨシでは、PBのブランド力向上がメディア露出の拡大→ブランドポジションの変化→業務提携という一連のビジネス成果に結びついた。これは「信頼→熱量」の変換プロセスを設計したことで、PR活動がROIとして可視化された典型例です。

 

まとめ:コーポレートブランディングで「選ばれる企業」へ

本記事の要点を整理します。

1. 「良い会社」と「選ばれる会社」は別物

品質・誠実さ・取り組みだけでは不十分。「評判設計」こそが選ばれる理由をつくる。

2. 企業の評判は「倫理性×社会価値×対話力」で決まる

現代の評判形成は、遵法性や業績だけでなく、社会との対話の深さによって左右される。

3. 対話力を可視化し、課題に応じたコミュニケーションを設計する

情報開示・主体的発信・エンゲージメント構築の3段階で、自社のボトルネックを特定する。

4. Earnedを基軸にSOEP戦略を設計する

ファクトに基づくマスメディアPRを起点に、SNS・オウンド・広告を組み合わせて統合的に展開する。

 

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「自社の対話力がどの段階にあるか知りたい」

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書き手:コーポレートブランディング部 川島弓奈  

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