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  • 2019年12月16日
  • セミナーレポート

広告・PRが生活者に嫌われる理由。マーケターに必要な“価値観のアップデート”とは 【MASHING UP・遠藤編集長と語る現代の多様性(後編)】

クチコミマーケティングの最新動向を、各界で活躍するスピーカーが語る「WOMJクチコミフェスタ」。2019年は、11月22日にアーツ千代田3331にて開催されました。本記事では、「MASHING UP」編集長・遠藤祐子氏とビルコム株式会社統合プランニング局 部長・茅野祐子のトークセッションより、多様性の時代にマーケターが持つべき視点についてお届けします。

 

 

    

 

登壇者

株式会社メディアジーン 編集部門 執行役員
MASHING UP編集長 遠藤祐子

2005年株式会社カフェグローブ・ドット・コムに入社、cafeglobeの副編集長、編集長をつとめる。2012年8月より株式会社メディアジーンにおいて、cafeglobe編集長、MYLOHAS編集長を経、2015年7月女性メディア統括プロデューサーに。2015年11月よりメディアジーン編集部門執行役員。

 

ビルコム株式会社 統合プランニング局 部長
茅野祐子

 

大学時代は国際関係法学科にて学び、国際関係とサステナビリティに関する興味関心を深める。2009年に新卒でビルコムに入社。メディアプロモーター、オウンドコンテンツの企画・ディレクション業務の経験を経て、クライアントのコミュニケーション施策全体をメディア横断でプランニングしている。

 

コンプライアンスだけでなく、生活者の価値観にも注視

 

(茅野)来場者の皆さんは日々意識されていることだと思いますが、ソーシャルメディアは多様性時代とすごく関係があると思います。ソーシャルメディアが出る前は、報道されたり直接触れたりしない限り、新たな価値観に接する機会がなかったですよね。

 

PR会社としては、企業のコーポレートレピュテーションはいつも気にしていて、リスク対応に求められることもすごく変わっていると感じています。例をあげると、あるメーカーがソーシャルメディア上でネガティブな話題が問題になったときに、「自分たちが行ったことは法的に問題ない」というコメントを発信されて。コンプライアンス的にはそれで収まるはずだったと思うんです。でも、生活者からは「問題はそこではない」など、企業の対応をネガティブに捉えるツイートが広まったことがありました。

 

昔はメディア報道だけを意識していればよかったかもしれません。でも、SNS時代は生活者の反感が可視化されるので、さらにネガティブなイメージが加速して、報道にもつながってしまう場合もあります。

 

(遠藤)これはコントロールできないですからね。

 

(茅野)コンプライアンスで判断するのではなくて、生活者の価値観に対応しているのか、という点を意識する必要があると改めて感じた一件でした。

 

(遠藤)そうですね。例えば、この某企業が人間だとして、「俺は法律的に正しいんだ」と弱者を切り捨てる人を、生活者は好きになるのか。あるいは、「法的には正しいけど、悪いことをした。だからこういう対応をする」という人と、自分はどちらが好きなんだろう、という視点があるといいかもしれないですよね。どういう企業(人物)だったら信頼するかな、とか。

 

(茅野)共感性というところでいくと、生活者の価値観がどう変化しているのか、どんな論点があるのか、などにアンテナをはる必要がありますよね。

 

企業コミュニケーションに必要なリスペクトとフェアネスの視点

(遠藤)日本って、日本人が大半を占めているけど、外国出身の方もたくさんいらっしゃいます。障害者の方、病気の方やLGBTの問題も話題には上がりますけど、まだまだ男女間の格差は大きいというファクトがあるのも事実です。

 

MASHING UPは「ダイバーシティを女性目線で考えよう」というメディアで、今年は「Reshape―視点を変えよう」という通年のテーマを掲げています。6月と7月には、パートナーシップについて考える特集を組みました。編集者である妻が大黒柱で夫が主夫の夫婦とか、一緒に暮らさない夫婦とかね。私たちが思っている以上に人って違うし、幸せのかたちも違うということを感じさせてくれる取材経験でした。

 

私たちとして気をつけているのは、取材対象者への公平な姿勢やリスペクトを持つこと。そんなことは当たり前なんですけど、そういう意識でそれぞれのストーリーを興味深くうかがいました。

 

 

(茅野)企業のコミュニケーションも一緒ですよね。リスペクトとフェアネス。お客様に対してもそうですし、世の中に出ていく表現に対してもそうですし。

 

(遠藤)はい。思っているよりも、人って自分と違う。「あなたもそうよね」って“あるある”で共感することは楽しいんだけど、違うことを受け入れる素直な姿勢も、とても大事なんじゃないかと思っています。

 

企業の広告コミュニケーションは生活者に嫌われている?!

(茅野)そんな論点をふまえて、近年は「企業の広告コミュニケーションもアップデートしていかなければならない」と言われています。プラン・インターナショナルの調査では、日本の女子高生・大学生の4割が企業の広告に不快に感じたことがあるとわかったそうです。逆に、いい印象を抱いたことがある人は3割しかいなかったということで、コミュニケーションの仕事をしている者としてはショックな数字だと思いました。

 

 

(遠藤)怖いですねえ(笑)

 

(茅野)女性を性的対象とした表現や、男性は仕事で女性は家事、のような旧来の固定観念を見せていることが不快感につながっているようです。

 

本来、広告は「生活者に好きになってもらいたい」とか「クライアントの考えをわかってほしい」と思いながら、費用も手間もかけてつくっているものです。それなのに、逆にネガティブな印象につながってしまっていることも多い。すごく残念だしもったいないな、と思います。

 

ちなみに、イギリスではジェンダー表現に関して広告規制があるそうです。

 

 

(茅野)①~④って、日本でも炎上しがちだけど、⑤や⑥は今のところ炎上すらしていないんじゃないかと思うんです。

 

(遠藤)うん、していないですね。①と②もまだありますよね。からかいはさすがにもうなくなってきた気はしますけど。

 

(茅野)一部、典型的なものはまだ炎上することもありますよね。今後は広告表現において、日本でもこのあたりを気にする必要があるのではないかと思います。

 

(遠藤)こういう要素がある、ということに気づいていない場合もあるんですよね。

 

(茅野)自分の中では普通だと思っていたり。

 

(遠藤)そうそう。 “保育士さん”と言うとスモックを着ている女性を書いてしまうとか。

 

(茅野)ありますよね、刷り込まれたものが。ステレオタイプや自分にとってのあるあるをベースにしてつくってしまうことで、ネガティブに捉えられてしまう事例が多かったのかな、と思います。

 

先ほど遠藤さんもおっしゃっていましたが、あるあるって面白いですし、共感ポイントをつくりたくてあるあるを使ってしまうのはよくあることだと思うんです。でも、それは自分のステレオタイプをもとにしているんだ、ということを意識しないといけないですよね。

 

(遠藤)「あるあるの中にいる」と自覚的でいて、だからこれをどう使いたいのかを考えないと。マーケター自身もあるあるの中にどっぷり入ってしまうと、世の中が見えていない感じになってしまうのかもしれないですよね。

 

マーケター・PRパーソンは価値観のアップデートをしよう

(茅野)ステレオタイプを自覚する、ということは、価値観をアップデートすることにつながると思います。そのような文脈の事例として、カミソリの『Gillette(ジレット)』で賛否両論を呼んだCMがありました。

 

 

 (茅野)「女性はこうあるべき」というステレオタイプは、今まで結構否定され、炎上もしてきたと思うんです。これは、男性のステレオタイプに疑問を呈したCMで、そのあたりにも議論が及んでいます。

 

この事例もそうですけど、価値観って日々アップデートされているんですよね。理想に寄せるべきなのか、リアルな価値観や状況に寄り添っていくべきなのか、というのは結構悩みどころだと思っていて。例えば、理想でいうと、子育てや家事はママだけがやるべきことではないと言われていますし、そう思っている方が多いと思うんです。ただ、総務省の社会生活基本調査では、妻が8割の家事育児を担っているというリアルもある。その中でバランスを取ってコミュニケーションをつくるのは非常に難しいと感じています。

 

 

(遠藤)だからこそ、理想像のアップデートが大事だ、という話にもなりますよね。

 

(茅野)はい。理想を見せているものなのか、リアルなものとして共感を生んでいるものなのかをちゃんと意識しないといけないと思います。

 

(遠藤)今の時代にフィットしていない理想を押しつけて不快感を与えちゃうとかね。そこは受け手側の気持ちを考えたいですよね。

 

(茅野)個人的な見解なんですけど、フィクションってプロの役者さんが演じているので、どうしても理想ぽく見えてしまうな、とは思うんですよね。

 

(遠藤)キラキラママみたいな(笑)

 

(茅野)そうです(笑)。PRは、ファクトベースが基本です。ですので、リアルを描くときはデータを盛りこんだり、リアルな姿を取材したりするなどしています。そうすることで、よりリアリティーを感じてもらえますし、当事者に伝わりやすいと感じることが多いですね。

 

代理店としては、「クライアントとディスカッションしよう」というのが大事なポイントかと思います。

 

(遠藤)どこにモラルのボーダーを持つのか、どう企業として見られたいのか。コンプライアンスや法律ではなくて、“どうありたいのか”というところですよね。

 

(茅野)そうですね。クライアントと一緒に、今の時代の多様性、価値観、論点を話し合って、生活者から愛されるコミュニケーションをとっていけたらと考えています。

 

 

    

 

◆前編の記事はこちら

生活者が企業に“社会的意義”を求める理由。世界中で進む多様性の受容 【MASHING UP・遠藤編集長と語る現代の多様性(前編)】

 

(書き手:ビルコム株式会社・高橋)

 

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